話し合い
ばあちゃんの記憶の中から
あれから何度か病院で検査をしてもらったが特に異常はなく。先生も『頭を打ったことでの一時的なもの――』と、難しそうな顔をしていた。
ちなみにばあちゃんは今ご近所さんとランチ中だ。ご近所さんは覚えているし。新しいご近所さんとの輪も広げ。日常生活にはなんら問題なしらしい。
「――なんでおにぃだけが……」
いろはが悲しそうな声でぼそりとつぶやいた。
ちなみにここ数日の俺は、自宅に居てばあちゃんと接触すると何かとトラブルになるかもしれないということで、ホテル暮らしというのを数日してみてばあちゃんの様子を見たが。俺が居なければ今まで通りの磐城家だったらしい。それは今両親たちから聞いた。ただ、俺がいないだけ。
実は俺めっちゃばあちゃんに心の中では嫌われていた説?とか思っていたが。誰も答えはわからない。
それからどうするか。いろいろ考えた結果。さすがにずっとホテル暮らしは無理。俺が1人暮らし――って案もなくはなかったが。でもずっとこのままで良いわけはなく。話し合った結果。とりあえず慣らしていく。何度も会えばそのうち思い出す。または他人ではなくなるのでは?みたいなことになり。その日から俺は家に戻ったのだが――。
『――いろはの友達かい?』
『誰だいあんた?』
『――』
何故かばあちゃん俺の顔だけが覚えられない?のか。会うたび会うたびが初めましてとなっていた。
俺以外の爺ちゃん。両親。いろは。そしてご近所さんとはいつも通り話すのに、俺の事だけ認識されない――記憶されることがなかった。
もうこれ何かばあちゃんが演技でもしているのでは?と、皆が思うこともあったが。でも実際に何度も何度もばあちゃんは俺を忘れ――というのを繰り返した。そして日によって人が変わるというのか。俺を見ても話しかけてこないこともあれば怒鳴ることもあり。またいろはの友達――という認識の時は普通に挨拶してくると。なんともわからない状況だった。
みんなでどうするか考えたがなかなかいい方法も浮かばないし。ばあちゃんが俺の記憶を取り戻す雰囲気もないまま時間だけが過ぎて行ったのだった。
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