きっかけは突然に――
どのように話しかけるか。普段タクシーの人ってどんな挨拶してた?いや、こういう時はちょくちょくじいちゃんが使っているデイサービスの迎えみたいなのがいいのか?などと俺は思いつつ自宅前へと車を止める。
「――おはようございます。お待たせしました」
そして三山木に言われた通り。赤の他人。単なる送迎の人となってみると――。
「いえいえ、今出てきたところですわ。よろしくお願いしますね」
久しぶりに今まで通りの雰囲気のばあちゃんが居た。
「――」
一番あっけに取られていたのはいろは。完全に目が点だった。
ちなみに俺も『えー、家の外で会うだけでこんなに違うの?』だったが。話して思い出させる。さりげなく家の中に俺が居る作戦の時とは全く違う様子のばあちゃんだった。
いや、ホントきっかけはわからん。
それから危うくいろはを乗せ忘れそうになったが。いろはの奴動かなくてな。とりあえずばあちゃんといろはを乗せて走り出すと。車内では世間話が始まった。
たわいもない会話。なんで家の中であったのとここまで違うのか――だったが。でも今ばあちゃんは俺を赤の他人単なる送迎の人と思っているらしく。家族の事や。隣に知るいろはを褒めちぎっていた。ってマジでいろは特別扱いは変わってなかったが――まあいい。
病院までの数十分赤の他人扱いだったが。でもばあちゃんと久しぶりにまともな会話をした。
そして帰りはたまたま同じだった設定をしてみると――。
「あらあら、行きもお世話になりましたね。またお願いします」
どうやら赤の他人と認識すれば、記憶は繋がるらしい。
それから病院への送迎は俺といろはですることになった。たまたま――という設定で俺が毎回三山木に車を借りて迎えに行く。
そして――毎回会話が進むことにより――ふと。ばあちゃんが俺のことを思い出すのはもう少し先の話だ。
了
壊れかけの思い出 くすのきさくら @yu24meteora
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