昼休み

 俺の通っている大学は規模が大きく。たくさん学科があるので、普通なら予想できるはずの事なのだが。


「人が多いのわかっていて、なんで学食の規模が小さいか。ここケチるなよ」


 朝ごはんを食いそびれた俺はカバンの中にいつも非常食として入れている何とかメイトさんの力を借りて何とか昼まで空腹をしのいできていたが。いつも通りの光景。目の前の食堂への行列を見つつ愚痴っていた。

 俺の通っている大学。学生の規模と食堂が合っていない。全然人が入れないのでいつも大混雑である。それは学内にあるコンビニも同じでこの時間はどこに行ってもこんな状態だ。

 そして今日の俺には待つというのはなかなかきついことなので愚痴も出た。


「イライラしている奴がいるな。そんなに腹減ったのか?」


 並んでいた俺の隣に人影がやって来て声をかけてきた。


「あー、三山木みやまきか。お疲れ」

「ああ。樹も乙ー」


 俺に声をかけてきたのは同じ学科の三山木。入学式の時にたまたま席が隣になったことと。学科も同じだったのでその後も講義でも顔を合わせ。気が付けば無駄話をよくする仲になった友人である。

 ちなみに俺は特にファッションとか気にしない無頓着な男。そして学内の友人は――まあ普通といったどこにでもいるような平凡学生だが。

 三山木の方はファッションや美容にかなり力を入れている奴で、そしてサークル活動とかも積極的に行い。広い交友関係を持っている。なんで俺とこいつがこうして毎日のように挨拶をし。雑談をしているのか謎といえば謎なのだが――まあ三山木は誰とでも話すのでたまたま俺もそれに引っかかったのだろう。


「で、空腹の樹は今死にそうと」

「死にそうまではだがまあ腹は減ってる」

「ちなみに俺は今1限で同じだった女の子たち車に乗せてランチ行ってきたわ。ホットサンドの店行ったんだがな。めっちゃうまかったわ。今度樹も誘うわ」

「――」

「おっ。樹が『こいつなんで空腹の俺に対して自分は満腹アピールしてるんだ?嫌がらせか?』とか思ってそうな顔してるな」


 バシバシと、笑顔で三山木がそんなことを言いながら俺の肩を叩く。

 

「――はぁ。ほぼ満点。っか、なんで満腹に三山木が食堂に来てるんだよ」

「飲み物欲しくて自販機に来たら樹見つけてよ。そしたら空腹で死ぬー見たな顔していたから声かけた」

「マジか」

「嘘嘘。いつも通り間抜けな顔してた」

「おい!」


 いつも通りだがなんなんだよこいつは――って無駄な体力を使わせるなだ。


「で、寝坊か?っか、最近の樹疲れている事多いよな?」


 ちゃらんぽらん。自由な感じで過ごしているイメージがある三山木だが。なかなかいいところをついてきた。またはさすがにあれ以来さすがに周りがわかるレベルで俺は疲れているのだろうか?まあそりゃ家でくつろいでいるようでくつろいで――だからな。そこまではしんどくないが。いろいろ意識していないとだからな。


「いろいろだ」

「なるほど、俺と同じでたくさん女の子と遊んだと」

「全く違うから二度と話しかけないでくれるか?」

「酷いなー。友達の心配してるのに。で、お兄さんに話してごらん?」

「何様だ」


 と、わざわざ家庭のことを話すつもりなどなかった。

 なかったのだが――。


 ★


「――そんなことがあったのか」


 どうやら俺は疲れていたらしい。

 あれから食堂で持ち帰りの弁当を購入し。そのあとも付きまとってきた三山木と共に空き講義室。次の講義室へと行き。やっとちゃんとした食事にありついたところで俺はここ最近のことを三山木に話していた。


 何があったかというと。いろはの誕生日の日の夜の事。


 ばあちゃんが救急車で運ばれた。

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