「おはよー」


 俺、磐城いわきいつき大学2年生。現在実家暮らしでほのぼのと楽しい大学生活を満喫中。

 今週も楽しい日々を送って金曜日。疲れがあるが朝頑張って起き。今日の講義を乗り越えれば休み。などと思いつつ家族の話し声の聞こえるリビングのドアを開けると。いつも通り母親と父親は――もう出かけているが妹とじいちゃんそして――。


「――誰だいあんた!人様の家に勝手に入って来て!」


 おっと、今日はいきなり睨まれる。そして怒鳴られる日だった。

 俺がリビングのドアを開けるとほぼ同時に、それまで聞こえていた会話を強制的に止める叫び声。

 俺はに指を差されつつ怒鳴られたのだった。

 

 朝から怒鳴られたところで、俺の頭の中でカチッとスイッチが入る。


「あー、ごめんなさい。寝ぼけていて家を間違ったみたいです」


 そんな間違いする奴いないだろう。と、思われるだろうが。今は気にしないでくれ。この家ではこれでいいんだ。

 怒鳴られた俺は入って来たドアからすぐに言葉を言いつつ廊下の方へと足を戻しさっとドアを閉める。そしてそのまま大学へと出かけるために自室へと向かう。


「そんなんで許されたら警察なんていらないよ!ちょっと待ちな!泥棒!」


 背中のドアからは再度怒鳴り声が聞こえてくる。

 もちろんその反応もごもっともである。俺も向こうの立場なら同じことを言っていただろう。

 いきなりが自分の家の中に居るのだから。


「ちょっと、あんたたちなんでそんなに冷静なの。警察呼んで!早く!泥棒だよ!」


 ドアの向こうでは興奮しているのか。まだばあちゃんの少し息を荒げたような叫び声が再度聞こえて来ている。

 本当にお巡りさんを呼ばれてもおかしくない騒ぎようだ。


「ちょ、ちょっと。おばあちゃん。どうしたの?その――誰もいないよ?」

「お前ー。朝から幽霊でも見たか?何騒いでるんだよ。年取ると見えないもんが見えるんか?はっはっ」


 しかしこの時。お巡りさんが呼ばれることはなかった。

 俺が部屋を出てすぐ。怒鳴るばあちゃんに話しかける妹のいろはの声と。じいちゃんの声がドアの向こうから聞こえて来たからだ。俺がいなかったことにしてくれたからだ。


「何言ってるのよ。じいさんたち。今ドア開けて男が入って来たじゃないの!」


 でも、さすがにあれだけ興奮しているとばあちゃんは落ち着かないみたいで、まだ声が聞こえてきている。なので俺は音をたてないように自室へと一時避難。そして少しして声が聞こえなくなったところで、そっと荷物を持って大学へと向かったのだった。

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