Re:start

にわ冬莉

星が流れた

 流れ星を見た。


 ほんの一瞬のことで願いを掛けることは叶わなかったけれど、それでも流れて行く星のひと筋をこの目に焼き付けることが出来たのは奇跡だと思う。


「もうすぐだね」

 吐く息は白く、空気は澄んでいる。

「うん、もうすぐだ」

 そう返せば、また同じように言葉が白をまとい、宙を舞う。



 僕たちは遠くまで見渡せる小高い丘の上にいた。

 地上に広がっているのは、一面の廃墟。


 崩れたビル群、幾重にも積み重なった車。

 昨日はまだ所々から見えていた煙も、今は消えてしまっているようだ。


 崩れた瓦礫の下、ずっと下には、怯えた顔で固まって震える何十万、何百万の人類がいるのだろう。

 一縷の希望を胸に地下に潜った人たちをとやかく言うつもりはないけれど、偉い学者がお手上げだと匙を投げた天変地異を、どうして乗り切れると思うのだろう?


 それでも人は、希望を抱く。

 滑稽だ。


 それこそが人という生き物なのかもしれないけれど。




 僕たちは滅び……そして、始まる。

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