第5話 秋山ほのかの場合【解答編】

 吉田と鑑識はいい仕事をしてくれました。見事にの犯行が白日のもとに晒されることとなったのですから。


 皆までおっしゃる必要はありません。あなたの労したトリックはすべてバレていますよ。


 爆発の直前、液晶パネルに表示されていたのは……稿稿


 トリックはこうです。


 レーザーポインターをイスなどに縄で固定し、スイッチを入れる。その光の先に黒塗りのマッチを置き、近くに雷管を設置します。


 さらに、液晶パネルをレーザーポインターとマッチの間に挟みます。液晶パネルで多少光が屈折するでしょうから、そこはマッチに光が当たるように角度を調整します。


 完了したら、火がつく前に液晶パネルにカクヨムのPV数を表示。PVの数字の部分に光が当たるように調整します。


 すると、カクヨムの文字は黒色ですから光を通しません。


 そして――殺人を完了させたのは、そこのあなたです。あなたのアカウントがアクセスしたのがきっかけでPV数が変化し、爆弾が引火したことが判明しています。


 「そんなこと知らなかった」? しらばっくれるつもりですか?


 数々の証拠があなたが事実を知っていたことを裏付けているのです。


 そもそも、レーザーポインターや液晶パネルをセッティングしたのは誰なのでしょうか?


 現場は出入り不能な密室だったわけですから、当然一人に定まりますね。そうです。です。


 では自殺なのでしょうか? 答えはノーです。


 自殺なのであれば、液晶パネルを挟んでPV数が変化したときに……などと頭を巡らす必要はありません。ではなぜ秋山さんはそんなことをしたのか。


 彼女は自分で自分に手を下すことができなかったんです。きっと怖かったのでしょう。だから他人に任せることにした。


 つまるところ、俺はであると睨んでいます。つまり、あなたは秋山さんに頼まれて、PV数を増やして殺害したのです。


 話は少し変わりますが、この時間差トリック、人気作家だとPV数が目まぐるしく変化するので利用できません。


 ですが鑑識によると『犯人はあなたです。』の作者は全く人気がなかったそうです。


 だからこそあなたのその一読が秋山さんの生死を分けてしまったわけですが。


 俺が非常に疑り深くなっているのは、『犯人はあなたです。』なる短編にあなたがアクセスしたことそのものです。


 全く芽の出ていない素人作家の短編を読む? 面白いことが保証されている商業出版の作品がごまんとあるのに?


 。ですから、秋山さんに頼まれて仕方なくやったとしか考えられないのです。


 知り合いの検察にこのことを話すと、「起訴に踏みきるのに十分すぎる証拠でしょう」と堂々と言いきっていました。


 残念ですが、あなたの負けです。事実はどうあれ、状況証拠があなたが嘱託殺人犯であることを物語っているのです。


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 5年後、渡辺刑事とその知り合いの検察1名が懲戒免職になったという。理由は、強引な捜査で別件の強盗殺人の冤罪を生み出したことだった。


 彼らの手によって刑務所に入れられた者は数知れず。その中には冤罪を主張している者もいるそうだが、真相は闇の中である。


(了)

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犯人はあなたです。 高野 豆夫 @kouyadoufu999

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