第4話 秋山ほのかの場合【問題編】
俺は、吉田と二人で郊外の一軒家を訪れていた。ここで若い女性が殺害されたという。
鑑識が出てきて敬礼した。
「現場検証は終了しました」
「ご苦労だった」
俺が答えると、鑑識官は会釈して去っていった。
足を踏み入れると、中はひどい有り様だった。床は黒く焦げついて、大きな穴が空いている。
「爆殺か?」
俺が思わず尋ねると、隣にいる吉田が答えた。
「そのようです。死亡したのは
「嘘だろ」
「本当です。秋山さんは
「なんてこったい。詳しい状況は?」
「第一発見者は向かいの家の住人です。大きな爆発音が聞こえたため様子を見に来たら、窓から秋山さんの遺体が見えたと。明らかに死亡していたので、110番通報したそうです」
『明らかに死亡していた』というのがどういうことを表しているのか、想像に難くない。爆発の影響で……まあそういうことだろう。
「密室というのは?」
「この家の周囲には監視カメラが4台設置されています。外周のすべてを網羅しているのですが、犯人らしき人物は写っていませんでした」
「監視カメラはいつ設置されたんだ?」
「2ヶ月前です。さすがに外部犯が2ヶ月間も一軒家に潜むのは無理があるでしょう。ですので、家には秋山さんただ一人だったと思われます」
「ふむ……。密室というが、時限爆弾が使われたわけではないのか?」
「はい、もちろん確認済みです。鑑識によると、雷管に点火する方式の爆弾だったそうで」
密室内で雷管に着火する方法、か……。
「ふーむ。さっぱり分からんな」
「実は被害者のそばにこんなものが落ちていたそうです」
吉田が提示してきたのは、2枚の写真だった。
一枚目は――
「何だこれ? レーザーポインター?」
「ご名答です。おそらくこれで着火したものと思われます。こちらかなり高出力のレーザーポインターとなっておりまして、黒塗りにしたマッチなどに光を当てると、数分後に火がつくそうです」
「ほほう。こっちの2枚目の写真は? 透明なガラス板のようだが……何かの機械か?」
「こちらは透明な液晶パネルです。不思議なことに、液晶パネル越しに反対側が見通せるようになっている代物です。これを外国人との間に挟むと、同時通訳とかに使えるみたいです。もちろんインターネットにも繋げます」
「他には何か見つかったか?」
「焦げついたロープやら倒れたイスやらはありましたが……。もともと家にあった備品なのか、はたまた犯人が持ち込んだものなのかは不明です」
そのとき、俺の脳内にあるアイデアが降ってきた。
「分かったぞ、吉田。鑑識に頼んで、爆発の直前に液晶パネルに何が表示されていたのかを調べさせてくれ。それですべては明らかになるはずだ」
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