第4話 日常 3
「じゃあ鈴木君はいつも通り、洗濯とか掃除をお願いね!」
「了解です」
鈴木のアルバイトの業務内容は決まったものだ。掃除や洗濯、もしくは雑務だ。理由としては、鈴木が*無能者*なのが大きい。認知症高齢者といえど、能力を持っている。認知症の為、能力を暴発させる危険性もあるため、鈴木は裏方の仕事を主に行う。
〜アルバイト終了時刻〜
「鈴木くんー!時間だよ!あがっちゃってー!」
主任の元気な声がフロアに響く。
「はーい!」
鈴木も声を少し張り、返事をする。鈴木は勤務室へと戻ると、
「いやー、鈴木くんにはいつも助かってるよー!」
そう声をかけるのは、主任の滝沢さん。
「滝沢さん、お疲れ様です。今日も元気ですね。」
「まぁね!元気出さないと仕事なんてやってらんないよ!」「鈴木君も元気だしなよ!あ、でもこれ、パワハラになっちゃうわ!」
ニコニコと元気な滝沢さんを見て、鈴木は苦笑した。
「じゃあ、滝沢さん、お疲れ様でした。皆さんもお疲れ様です。」
「お疲れ様ー!」「お疲れー」「お疲れ様ですー」「またねー」
〜滝沢目線〜
「鈴木くん、また顔に痣ができてましたね。主任。」
男性職員の1人が言う。
それに対して滝沢は言う。
「そうね、あの痣をつけた奴、私がぶっ飛ばしてやろうかしら…」
それを聞いた女性職員は
「それは良いですね!ボッコボコのグッチャグチャにしてやりましょう!主任はAクラスの能力者なんですから!」
滝沢は苦笑し、「冗談よ。」
「なーんだ」「えー、ボコりましょうよー」「やっちまえばいいのにー」等々、賑やかになる勤務室。
滝沢は思う。最初にこの施設に来た時の鈴木君を。この特養はCクラス以下の能力者は仕事ができないようになっている。何故なら、過ごされている高齢者の殆どが、高クラスの能力者だからだ。国が管理しており、国のお眼鏡に適った高クラスの能力を持つ職員であることが求められる。
その例外が鈴木くんだ。無能者ということでアルバイトであろうと採用されない筈だったが、書類で何度落としても、書類を送ってくる。結局、施設長が根負けし,面接をして採用した。
「鈴木くん、うちに就職できないかしら。」
「無理でしょう。だって鈴木君は…無能ですから…」
「そうよね…」
「主任ー!時間です!申し送りしますよー!!」
「いまいくわー!」
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