第10話 変化 5

右手から溢れた「それ」は黒い水だった。蛇口を捻った時のように、黒い水が溢れ出てきた。


鈴木は「なんなんだこれ、、、」と少し呆然とする。その間にも黒い水は出続け、少しずつ勢いを増していく。すると、黒い水が蠢きそいつの遺体に向かっていく。遺体に覆い被さり、包み、小さく纏まっていく。段々と小さくなり、50センチ程の楕円形の球体になった。


「なんなんだよこれ、、、、」

いつの間にか鈴木の右手から溢れ出ていた黒い水は止まっていた。


鈴木は思う。これは能力なのか?なんで俺は右手を出したんだ?そもそもどうして俺は能力を使えると思ったんだ?、、、ets


暫く鈴木が考え込んでいると、黒い楕円形の球体になった「それ」が動く。


「は?」


ピョン!ピョン!ブルッブルブル!


「動いてるよ、、動くのかよコイツ、、」

犬みたいだなぁと、鈴木はぼんやりしながらも思う。


すると「それ」は鈴木に近づき、足元に行くと


スリスリ


と足に顔を擦り付けるような行動をとった。鈴木はまた犬みたいだなぁと思う。


「、、なぁ俺の言葉、、わかる?」


「それ」は足元でピョンピョン跳ねる。


「、、、じゃあ動かないで、」


「それ」はピタッと足元で動きを止める。


「、、わかってそうだな、、、とりあえず帰るか。俺のリュックの中にはいれる?」

鈴木はリュックの上をあけ、「それ」に向け、地面に水平に置く。

「それ」は嬉しそうに跳ね、リュックに飛び込んでいく。


鈴木は「それ」がリュックに入ったことを確認し、リュックを背負い帰路につく。


帰り道を歩きながらふと思う。

そういえば死体から出来たのかこいつ。じゃあ死体は残らないのか、、と。


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表と裏、空っぽな自分 @shuunshuunshuun

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