第4話

 ランジェリーショップに俺と、平川さん、末広さん、本田さん、江口さんと入った。


「おお! めっちゃ派手なのあるし」


「祐梨、今日の目的は地味な白いやつだからね」


「はーい」


 いろんな種類の下着が売り場に並んでいた。


「うわあ! 初めて来たけどめっちゃあるし」


 そう言って、平川さんは即座に売り場をぐるぐる回る。


「……さて、祐梨とは後で合流しましょう」


 残った俺たちはゆっくりと歩き回った。


 正直、白い下着買うだけなら、こんな専門店じゃなくデパートとかで買えば事足りそうな気がするが。


「里奈ちゃんはセクシーなの買うんじゃないの? これとか」


「買わないわよ……あら、でも意外に可愛いかも」


 本田さんは色っぽい桜色の紐パンを指さす。


 布面積が小さくて、両端を結ぶタイプのものだった。


「りょうくんに見せる用の勝負下着にちょうどいいんじゃない?」


「有栖。りょうくんとはそんなんじゃないんだからね」


 りょうくん、というのは1年2組のクラスメイトの一人だ。


 顔はイケメン寄りで、背は高いし、学力も悪くない。


 周囲に能力自慢してる様子はあるものの、まあ年相応に頑張ってる子だ。


「りょうと末広さん、付き合ってたの?」


 俺は質問する。


「違いますって、先生。好きな男子は誰って質問に、少し気になるかもって答えただけなんですよ」


「なるほどな」


 まあ付き合っては無いらしい。


「これは恥ずかしがってるね」


「してないってば」


「このパンツ買うでしょ?」


「買いません。家族に見られたら恥ずかしいので」


「えー」


 本田さんは残念そうにする。


「山谷先生はどう思います! このパンツいいですよね」


「そうだね」


 俺は紐パンを身に着けた末広さんを想像する。


 安産型の大きめなお尻がよく見えることだろう。


 色もラブリーな感じで素晴らしい。


 何より同世代より大人びた末広さんが身に着ければ、中学生とは思えないほどの色気を醸すに違いない。


「……山谷先生、わたしで変な妄想してませんか」


「ああいや、そういうわけじゃ……うん、とっても似合うとは思うけど、自分で好きなのを選ぶのがいいんじゃないかな! うん!」


「ですよね。わたしも好きなのを選びたいと思います」


 末広さんから信頼を感じる。


「……」


 この時、江口さんが俺の反応を黙って観察していた。


 俺は自分の下心が見透かされたのかと思い、内心動揺する。


「あー……いいデザインしてるから、ついドキッてなっちゃうよね」


「……うん」


「いろんな下着があって悩んじゃいそうだよね」


「……ぁ、ぁの」


「ねえねえ、せんせー」


 すると、売り場をぐるぐる回ってた平川さんが戻ってきた。


「せんせーはどんなパンツが好きなの?」


 平川さんの目はキラキラしてる。


 平川さんは俺をからかってるのではなく、純粋に興味本位で聞いてるようだ。


 そしてみんな、俺の答えに注目していた。


「ええと俺は……」


 周囲に目を向け、目ぼしいのを探す。


 すると、売り場の一つにとてもかわいいコーナーがあることに気づいた。


 反射的に指さす。


「先生はこれがかわいくて好きかな!」


 その先にある下着、可愛らしいキャラクターがプリントされてるパンツだった。


 中学性が身に着けるには少し、という以上に子供パンツだった。


 どうやら反射的に選んだのは失敗だったらしい。


「へー! 先生こんな子供っぽいパンツが好きなんだ!」


 本田さんは正直な感想を俺にぶつける。


「先生ってロリコンですか!」


「!!? い、いいいいいいいいや、そそそそんなことはございません……よ?」


 いや、ロリコンなのは事実だ。


 そして尚且つ、少年少女を全力で愛した結果、教師を志したのも事実だ。


 しかし、わざわざロリコンであることを言いふらされて犯罪者扱いを受けるのは洒落になってない。


 実際に犯罪をする気はないし、生徒たちを怖がらせるのも本意でない。


 頼むからこの嘘に騙されてくれ!


「山谷先生はやはりそういう趣味だったのですね」


 どうやら嘘は見抜かれたらしい。


 悲しいね。


「まあ、悪いことさえしてなければいいと思いますよ?」


「え……」


 末広さんは優しくロリコン(俺の性癖)を受け入れた。


 女神かよ。


「えーてかこのパンツふつーによくない?」


 平川さんは本田さんに話しかける。


「でもやっぱり子供っぽくない? わたしが4年生の時に卒業しちゃったし」


「え! 早くない! 今でも履いてるんだけど!」


 その瞬間、平川さんはズボンを半分脱いだ。


「「!」」


 いわゆる女児向けのゆるキャラがプリントされた、子供向けショーツ。


 平川さんの締まった太ももと腹、そしてパンツ姿があらわになる。


 その場にいたのが、俺たちだけで本当に良かったと思う。


「きゃ! ゆ、ゆりちゃん大胆!」


 思わぬ展開に、本田さんは顔を隠しながら驚く。


「祐梨! 恥ずかしいから早く隠して!」


「え~誰にも見せてないし恥ずかしくないじゃん」


「おほん……わたし達が、恥ずかしいの」


 平川さんを一言で説得する。


「はぁい、ごめんなさい」


「分かればよろしい」 


 平川さんはズボンを履いた。


 そして、末広さんが俺に向かって話しかけた。


「山谷先生、パンツをガン見してたでしょ。んもう、こういう時は見ないように心がけてください」


 めっちゃ説教された。


「いいですね?」


「はい! わかりました!」


 魅力的な女子生徒に説教され、思わず敬語になる俺だった。

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