白パンツ以外認められない有名進学校の教師だが、その校則に反対した結果、生徒の女子達に好かれ俺を慕いまくってくるのだが

シャナルア

第1話

 私立拍亜<はくあ>学園。


 中高一貫校で、有名な進学校でもある。


「私は皆さんの担任であり、情報科目を教えてます。山谷です」


 拍亜学園の中学校校舎。


 入学式直後の、一年生たちに自己紹介する。


 目の前にいるのは、1年2組の生徒30人。


 自分にとっては、教師になって初めての教え子である。


「よろしくお願いします」


 ぱちぱちと拍手が鳴る。


 今日のスケジュールをこなしながら、皆を観察する。


 男の子も女の子も皆、可愛らしい。


「それでは今日はおしまいです。明日また会いましょう」


 教室はがやがや騒がしくなる。


(これから仲良くなりつつ、ゆっくりとこの子たちの成長を見守っていこう)


 これからの未来を想像し、ワクワクする。 


 この時、俺はこんな感じの調子で平和が続くと思っていた。


 が、俺はまだ赴任したばかりの新人教師であったため、知らなかったのだ。


 この学校に存在した、とんでもないブラック校則を。


***


 朝8時、廊下の窓を開け、空気を入れ替える。


 教師は朝からやることが多い。


 窓から外を見ると、体育教師でありかつ生活指導を行っている古居先生が、竹刀を持って校門前に立っている。


 登校してきた生徒たちに挨拶してるようだった。


「俺もやること終わったら校門に行かないと——って、ん?」


 古居先生が何やら4人グループの女子生徒を呼び止めていた。


 そして、2、3言葉を飛ばした後、女子達はスルスルと、スカートを上にめくった。


「へ?」


 中学生の女の子たちが、白い下着を男性教師に見せていた。


 俺は目の前の光景が信じられず、目を丸くする。


「よぉし通れ!」


 古居先生の声が、校舎にいた自分にまで響く。


 校舎へと向かう女子4人に会話は無く、表情が死んでいた。


「一体何やっているんだ????」


 俺は作業を投げ出し、校門の古居先生の元に直行した。


***


「さっさとスカートの中を見せろ!」


 竹刀をバチンと地面に叩く古居先生を見つける。


 その言葉の相手は見間違いようがない。


 1年2組、自分の教え子の女子だった。


「古居先生! さっきから何やってんですか!」


 二人は一斉に、自分の方を向く。


「山谷せんせぇ!」


 女子の方は、助けに来た自分を見て安心したような笑みを浮かべていた。


 平均的な身長に、つぶらな二重。


 小学生の時はバスケをやっていたらしく、スレンダーな体に、締まった手足。


 ショートヘアが可愛らしい平川祐梨(ひらかわゆり)だ。


「何をしてるのかだって? 下着検査、ですよ」


「下着検査!?」


「ええ、拍亜の女子は必ず無地の白い下着を履くように決まってるんです。……さあ続きだ」


「説明になってません! こんなのすぐに止めるべきです! 女子生徒たちへの人権侵害だ!」


「——ああ??」


 眉間にしわを寄せ、俺を睨みつける。


「そんなこと、俺に言うんじゃねぇよ。文句があるなら校長先生と理事長に直接言うんだな」


 俺はその言葉に負けず、返した。


「だったらそうします」


「……」


 数秒後、古居先生は怖い顔をやめ、いった。


「山谷先生は来たばかりで、昨日生徒達に校則のことを説明してないでしょう」


「……ええ」


 そもそも当たり前のことだから説明するまでもないよな? 普通? といった様子だった。


「なら、今日だけは1年2組に下着検査しません。——今日だけは」


 バチン、と竹刀を地面に叩きつける。


「通れぇ!」


 平川さんに大声で叫ぶ。


 どうやら本当に開放してくれるらしい。


 歯がゆい思いだが、これ以上は相手してくれる様子じゃない。


「教室に行こう、平川さん」


 平川さんはコクリと小さくうなずいた。


***


「はー、マジで怖かった」


 廊下を歩きながら、平川さんは俺に愚痴をこぼす。


「まったくその通りだ」


 平川さんの気持ちはすごく理解できた。


「普通に色パン履いてきたからさ、マジで大ピンチだった」


「ひょえ?」


 突然のカミングアウト。


 男の俺に、色パンって——


「ねえマジだって、見てせんせー!」


 スカートを左手でめくる。


 水色の下着があらわになる。


 そして——


「よっと」


 平川さんは、右手で右足のももを持ち上げた。


 片足で立ち、下着は全部丸見えだった。


 ゴム紐も、布のしわも、小さなリボンもさらけ出していた。


「お……おぅ」


 俺が驚きすぎて動けなくなってる間に、平川さんは足を下して、スカートをもとに戻した。


 俺たち以外誰もいない廊下の中で、間違いなく平川さんはパンツを丸出しにして、俺にだけ見せてくれていた。


「んもう絶対怒られちゃうところだった! 山谷せんせーが来てくれて助かったよほんと」


 恥ずかしがってる様子はない。


 気にもしてないようだ。


「ああ、平川さんは悪くない。校則が悪い」


 なんとか別の話題につなげる。


「ほんとそれ! せんせーどうにかしてくださいよぉ。毎日白パンはめんどくさいって」


「めんどくさい?」


「足りないから新しいの買わなくちゃいけないし、てか絶対間違えて普通の色パン履きそう」


 どうやらかわいい顔の割には、男への恥じらいが薄いようだ。


 そしてそろそろ1年2組の教室の前だ。


「なあ、平川さんは先生にパンツ見せるの恥ずかしくないのかい?」


「んー」


 俺がそう尋ねると、平川さんは考えながら答えてくれた。


「あの竹刀の先生とか、他の人に見せるのは嫌だけどさ……山谷せんせーなら見せても大丈夫! 全然っ恥ずかしくない!」


 異性として言われたなら正直へこむかもしれない。


 だが、平川さんは間違いなく、俺に心を開いてくれているのを感じる。


 平川さんは教室に入る。


「せんせーはまだ仕事?」


「ああ」


「じゃ、またね! せんせ!」


 これから先、どうなるのかはわからないが、間違いなく希望がある。


 平川さんだけじゃなく、ほかの子たちのためにも色々と頑張ることを決意するのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る