第四話:身請け


「はい?」


 数日後、エストはマダムに呼び出しされて事務所にいた。


「だから、お前さんを身請みうけしたいって客がいるんだよ。運がいいね、こんな安娼館の娼婦を身請みうけするだなんてね」


 そう言いながらマダムはチップの山をほくほく顔で確認している。

 この時代、電子マネーは勿論あるがこうしたチップはその価値が金と同様に高く、訳ありな業界では足つきにくいと言う事もあり重宝されている。

 勿論、普通の場所でもこれは使えるので、一般人も多少は保有している。

 ただ、それは電子マネーなどが使えない時の代用としてだが。



「あの、それで私はどうなるんですか?」


「ここでのお前さんの借金はもうなくなったよ。お前さんはその客に買われたんだから、一生奉公するがいい。その体でね」


 マダムはそう言ってエストに向かってキーコントローラを操作する。

 すると、エストの首が一瞬光ってから消える。


「これでお前さんは自由だ。後はもうじき来るその客についてゆくんだね。逃げるんじゃないよ? うちとのキーコードは解除したが新しいご主人様のキーコードは打ち込んだ。逃げればその首に仕込まれた小型爆弾でお前さんの首は飛ぶからね」


 そう言ってマダムは他の者に命じて奇麗な服を持ってこさせる。



「せっかく買い取ってもらったのにそのままじゃまずいからね、これを着ていくがいい。まあ、あたしからの餞別せんべつだよ」



 マダムはそう言いながらスパ~っとタバコを吸う。

 エストは言われるままにその服に腕を通すのだった。



 * * *


 

「あなたは……」


「迎えに来たよ。さあこちらへ」



 現れたお客はあの時の青年だった。

 彼はチャイナドレス姿のエストの姿を見てにっこりと笑い、乗ってきたリムジンに彼女を載せる。




 エストは新たなご主人様に仕える為にリムジンに乗り込むのだった。 

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