第二話:労働者


 宇宙では常に水の中に浮いているようなもので、本来性欲などき上がってこない。

 しかし、重力があるここ「エデン」では話が違う。


 ドーナッツのような形状のここでは、遠心力による仮の重力が人々に地球にいるのと同じくらいの荷重を与える。

 それにより人々はこんな箱庭の中でも地球の都市と同じような生活を送れていた。


 そしてここ「エデン」は各惑星委から採取される資源を一次精製して各コロニーや地球へ送りつける為の大切なプラント。

 鉱石や各種ガスなどはそのまま各コロニーや地球で精製すると環境汚染を引き起こすからだ。

 

 だからここ「エデン」でその一次精製を行う。


 しかしそこで使われる労働力は下級労働者と呼ばれる者たち。

 この時代でさえ高価な電子部品やパーツを使うアンドロイドや、工業機器より人間の方が安上がりに仕事をさせられる。

 何せ人間だけは鼠のようにその数を容易に増やせるからだ。

 

人権や道徳などと言うものは表面だけ。

 

ここ「エデン」で生きてゆくには人々は泥水をすすり、カビの生えたパンを喰らい、そして年をとってもぼろぼろになって死ぬまで働くしか生きてゆく方法はないのだから。


 世界連合と言う巨大な組織が出来あがっても、その組織が手を出しにくい場所なのだ。




「ふう、まぁまぁだったな、お前名前は?」


「エスト……」


「へへへ、んじゃまた指名するわ、たのまぁな」


 男はそう言ってベッドから起き上がり、服を着て出て行った。


 ここは「エデン」にある安娼館。

 この時代でも男たちの欲望は枯れることはなかった。

 下級労働者たちはプラントで働き、女たちはサービス産業に身を投じる。

 特に何の技術も持たない女たちの中にはこうして身を売りお金を稼ぐしか生きる方法がない街。


 エストと名乗った少女は裸のまま仰向けになって妄想をする。




 いつか白馬の王子様が私をこの最低の場所娼館から救ってくれると言う乙女のような夢を。

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