002

時は進み2010年3月14日



名物のうどんをリスの様にほっぺたを膨らませながら食べるリン。


「うまいか?」


「ほいひい」と口にうどんを詰込みながら何とか日本語になってない日本語を喋る、「まずそれを飲み込んでから喋れ、汚いぞ」

 うどんをすする、コシがあるのもそうだが具だくさんの汁がまたうまい。


「忘れてたが、この後別行動だ」


「別に良いじゃん、事務所でしょ?」


「ああ、そうだが国鉄の緊急依頼の報酬と転属願いを出さないといけない、どうせめっちゃ待たされるぞ」


うーんと唸る燐、さっきのリンのリスの様な姿とは別人の様だ。


「分かったよ、ボクのアパートで荷解きでも始めるよ」


「またわやにするんじゃないぞ」


「わかってるよ」


本当に大丈夫なのかと訝しむが、一日で大した事にもならんだろう、うどんが冷めてしまう食べてしまわなければ。

 昼には早く朝には遅い飯を食べ店をでる。

 燐と分かれ駅前からさほど離れて無いはずの、臣民防衛隊焔岸支部事務所に向かう。


臣民防衛隊は満十六歳以上で、学力、体力、心理テストの合格者が登録出来る。

 直ぐに仕事を受けることは無く各地で最低座学30時間、実地訓練90時間を受講する、最低限の法規制と直ぐに殉職しないための最低限の知識技量を身に付ける。

 十八歳未満は十八歳以上の分隊以上の隊の補助員にのみ仕事に就く事ができる。

 また臣民防衛隊での仕事を続けているなら徴兵免除されるため少しお得。

 臣民防衛隊員は探索者と言われる、かつて臣民防衛隊が開設される前は、対モンスターの何でも屋の隠語で探索者と言われていた、それが定着し探索者と言われ続ける、最近はハンターとも冒険者とも言われる事がある。

閑話休題


五分ほど歩いたら、事務所が見えてきた流石都会だビル一つ全部とはスケールがデカイ。

 キョロキョロとお上りさん状態であるがしょうがない田舎もんだから。

 呑気に周りを眺めている場合ではない、大量の荷物と相棒モシンナガンを担いだ変質者に間違われてしまう。

 早足で事務所に入るとしばらくすれば昼時であり利用者は少ない。

 窓口に書類を持っていくが案の定時間が掛かりそうなので、三階と四階が装備品店の様なので冷やかしにいこう。


フロア全体に各メーカーのブースがあり装備品がところ狭しと並んでいる。

 こっこれは!モシンナガン近代化改修キットだ、ありのままのモシンナガンの木目に照準尺の渋いスタイルもいいがこのレールーマウントもドラグノフの弾倉対応化いい、フレーム全体が樹脂化による軽量化と使用感が変わらないセミピストルグリップ、全体的にスタイリッシュな仕上がりになり最近の狙撃銃と何も遜色が無くなるのもいい、此を作ったヤツは分かっている備え付けのバヨネット銃剣も着けれるし、二脚もある。

 ふぅ、あまりにも素晴らしい物を見て興奮してしまった。

ここで見つけたのは偶然いや必然だ、俺に此を使えとモシンナガンの神のお達しだ...たいへん残念なことだ、このキットは素晴らしいお値段だ、スコープなし弾倉一つで\16.9800+税と、それなりの中古銃を買って軽くカスタム出来る程度のフルプライスだ。

 俺の現在の階級である上等兵の日雇い賃金が、一万から二万がいいとこ俺が此を買うのはなかなかきつい断腸の思いではあるが今日のところは見逃してやろう。

 どうやらこの近代化改修キットの前で一時間位考え込んでしまった様だ

 いい加減ながったらいお役所仕事も終わった事だろう。


さっき対応してくれたおば..お姉さんのもとへ向かう、どこか疲れたようなくたびれた姿で有るため実際の歳より上に見えるのかもしれない。


「お待たせしました、鷹野上等兵こちらが今回の、国鉄装甲寝台列車の緊急護衛の報酬です、\45.000-となります」


コトッとアクリル坂越しにトレーに乗った思った以上に多い報酬を受けとる。

 緊急であったため少し相場より多めと思ったが倍プラスαとは国鉄は太っ腹だ。


「あと、来年度の救急救命訓練なんですけれど、四月から六月は新人講習でたいへん込み合うので今月中に何回か行われるのでぜひご活用ください」


横の暦には丸が書かれた日がある。


「この丸の日ですか?」


「はいそうです、申し込みは当日の訓練開始の二時間前までにお願いします」


「はい分かりました」


やることやったし事務所を出る、強い日差し感じ暑い、まだまだまだ冬な実家と大違い桜まで咲いてやがる、あっちはまだ梅がこれからなのにな変な感じだ。

 駅前地帯であるから直ぐにバスターミナルがあり汗をかきながら向かうと。

 人も多く雑多な雰囲気の中バスを待つバスも運行本数も多いみたいで、そこまで待たず乗れる。

 車内からの眺めては兎に角人が多い事だ、ちらほらと武装している人も居ることはやはりここ焔岸にダンジョンが有るからだろうか、だから探索者の町と言われるのか。


 ダンジョンでのモンスター狩はより大きいモンスターコアが取れるから一定層に人気がある、だがダンジョンは平均的に交戦距離が短く、モンスターの密度も高い、よって負傷率、殉職率も高いまさにギャンブルだ。


しばらくすると街並みが住宅街へと変わり今後の最寄りバス停で降りる。

 地図アプリで母が借りたアパートへ向かう。

 たしか澤辺荘だったか、そこの管理者が母の友人だという、「澤辺荘の澤辺さんのところに訪ねろ」と母がいっていた。

 まんまじゃないか、もっとなんか無かったのか?

 余計なことを思考していたらついてしまった。


特に古くもなく綺麗な建物だ、ただやたらでかく澤辺荘と書かれていることを覗けばだが、まあいい入口付近にある集合郵便受けを見るかぎり澤辺さんは一階のようだ。

 澤辺さんの部屋のインターホンを鳴らす、ガタガタとこっちに来る音が聞こえるがそんなに忙しく来なくてもいいのにな。

 恰幅の良いおばちゃんが出てきた。


「忙しいなかすみません、此からお世話になる鷹野アキと..」


俺の話しをぶったぎり


「アンタが夏穂ちゃんの子かい、立派になったねぇそろそろくると思ったよ、チョット待ってなアンタの部屋の鍵をとって来るから」


ガタガタと駆けていってしまった。

 せっかちでなんか豪快な人だ、思わず笑いが出てしまう。

 ガタガタいわせて戻ってきた


「はいこれ鍵ね、二階の奥から二番目の部屋だよ、家賃は今月と来月分もらってるからいいよ、あとね挨拶だって物を持って来るけど要らないからね此方は商売だからね、持っていくなら周りの人に持ってきな、探索者みたいだけど体に気付けなさいよ、此から色々あるんだから。」


迫力にうんうんと首を縦に降るしか無かった。

 最後少しニヤっとしていた何だろうか?


部屋の鍵を開け..開いてた、荷物の搬入で開けてたのか?

 ん?なんか見覚えのある靴がある、やっぱり居た。


「何でリンが俺の部屋にいるんだ?」


荷解きしていたのか物が散乱した中、びっくりした顔で此方を振り返る燐。


「面白いこと言うね、ココはボクの部屋だよ勝手に入ってきてビックリしたよ」


「は?俺の部屋だが?母さんがこの部屋借りたんだが?」


「え?ママがこの部屋だって言っていたんだけど」


「は?」


「え?」


「エェェェ!?」

「えぇぇぇ!?」


衝撃の真実を知った俺たちはお互いの親にハメられた。


ある時の会話


「そろそろ気が付いたかな?サプライズに」


「いや気付けたでしょ、暇さえあればベッタリしてるんだから」


「アレで付き合って無いのよ、此方がムカムカしちゃうわ」


「ココまでお膳立てしたんだからくっつくわ」


「そうね、蓮ちゃんはどうするの?あの娘もアキを気にかけてるわ」


「レンはしっかりしてるから男見つけるでしょ、問題はリンよアレの貰い手アキ以外まず出てこないのよ」


ママ友の勝手な話しは続く。

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