探索者暮らし

Mistel

プロローグ 新天地へ


 2010年3月14日


俺は目の前にだらしなく大口を開けて寝ている女をみる。

 寝台から手と足を場外に飛び出し、備え付けの毛布も床に落ち暑かったので有ろうシャツとズボンもぐしゃぐしゃにして床に投げ捨てられ下着姿のあられもない格好でいる。

 上の寝台で寝る幼馴染みで一応異性である俺のことなんて知らんとばかりに寝ているとは酷いことだ。

 普段のコイツなら、ボーイッシュや中性的とキャーキャーとモテるがこの姿を見たら恋なんて冷めるだろう。


この装甲寝台列車での生活は四日目になる、本来の到着予想は二日目の十九時ごろのであった、まさか初日にモンスターの群れにぶち当たり綺麗に線路を消し飛ばしてくれたもんで、モンスターの熱烈なお出迎えをこの装甲列車受け止め、軍の戦闘工兵による修復待ちになり、まる一日半足止めを食らった。

 このイレギュラーによってモンスターを殺す事を生業とする探索者たる俺の懐がちょっぴり暖かくなることはいいことだ。


ぼけーと現実逃避をやめてこの不様な幼馴染みを起こさないといけない、後一時間ほどで目的地についてしまう。


「おーいリン起きろー!」


少し声を張り上げて声をかけるも無反応、二度三度声を掛ければ「あと15ふ~ん」っと抜かしている。

 起きないのなら強硬手段に出るしかない。

 燐が寝ている寝台に座り、燐のほっぺを左右からぐいっと引っ張る「ヒーターイー」と情けない声を出すが構わずほっぺを伸ばしたり縮めたりする。


「おっ、起きたか」


「起きてるよ!最後のほうわざとでしょ

ボクのイケメン顔が腫れて台無しなったらどうするの?」


「知るか、眠りのリン」


ムスーっとこっちを睨むがかまわない、コイツが呑気に寝ていたからだ 。


「そんなことより良いの?そんな格好で外いくのか、痴女として捕まってしまうぞ」


「ん???...えっ!!

アキ!ボクを脱がしたの変態め!」


「脱がしてネーヨ!

服を着ろ服を早くしないとついちゃうぞ、もうとっくに一時間切ってる」


燐は慌てて自分のキャリーバッグをガサガサと漁り服やら化粧道具やら取り出し色々やっていく。

 しょうがない事にさっきより個室が散らかってしまった、燐のほっぽり出したモノを整頓しながらチラッと燐を見る、いつもより化粧に気合いが入っているが結局はいつもの燐だ。


あーだこーだとやっていたら、すぐに三~四十分なんて過ぎてしまう、すると[ご乗車ありがとうございます、間もなく~]っと到着アナウンスが流れる。


「さて、行くか燐!」


「うん、いこうアキ!」


ニコニコし少し興奮気味な燐、多い荷物もへっちゃらなようだ。


「アッ...アキ」


少し深刻そうな顔しながら


「ボクまだご飯たべてない...」


俺は驚愕し呆れて声もでない、無言の圧力を燐に向けるしかない。

 燐が部屋を.わや.にしてなければ、食堂車に行き軽食位買って食う暇もあったのだ。


オレはイイ笑顔で「行こうか」言い荷物を引き歩きだす、すると燐はあわわっとついてくる。

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