005


燐のおかげで、午前の救急救命訓練が行けなくなってしまった、まあ午後にも行われるからいいのだが。

 燐に柄でもない事して余計に気まずい。

 まあ未来に俺が妙案が思い付くさ、燐はバイトに行って帰るのがたぶん遅いから時間はある。

 さて、受付でわかった事だが訓練が始まるまで二時間も暇だ、のんびり事務所にいるのは余り無い、初見の時にモシンナガン近代化改修キットを見た時と、ジシスの依頼を受ける前にカフェスペースで依頼の冊子を見た時だけだ。


地下に射撃場が併設されている、一般的な的当てと焔岸ダンジョンの一階層を模した屋内戦用だ、今回は普通の的当てに用がある。

 スチェッキン・マシンピストルは俺の使う武器で唯一の連射可能武器で、初めて自分で選んで買ったロマンのある大型自動拳銃だ。

 此の良いところはマシンピストルと云うだけあって、フルオート射撃ができなおかつ、専用のホルスターを使いピストルカービン化ができる、これは取り回しが悪いモシンナガンの使用が難しい場所でメインアームになり得るポテンシャルを持つサイドアームだ。

 良くないとこは現状法規制の都合で十発しか入らない弾倉しか持て無い、毎分約七百五十発も垂れ流されるフルオートは一瞬で弾倉を空にする、また使用弾薬の9×18弾これは小型モンスターにある程度有効であるが、一部の小型モンスターや中型モンスターには貫通力もストッピングパワーが低いと言わざる負えない、これは拳銃弾全般にいえる問題であり弾芯の変更された弾薬を買う事で対処する事にしている。

 このような問題を抱えているが、モシンナガンが使え無い時に唯一使える武器であることは変わらず、自信が生き残るための手段になる相棒でもある。


 このスチェッキン・マシンピストルは此方に来てから撃っていない、的当て位やらないと腕がなまってしまう。

 基本的に緊急時に使うためコイツを使う事態になっていないことは良いことだが、此方のモンスターの接敵率はとても高い俺の運が悪いだけなんてこともあるが、警戒をしない理由にはならない。


地下射撃場の受付で使用料と9×18弾を買い、俺の場所である三番射場に向かう。

 まずは自前の耳栓と電子イヤーマフを着け、カービン化はせず肩幅程に足を広げ両手でスチェッキンをホールドし腕を伸ばしスチェッキンの確かな重みを感じながら、ゆっくりと的を狙い射撃する。


射撃をするが耳栓とイヤーマフのおかげでほとんどの音は入ってこず反動が感じる。

 立射から座射へ、ゆっくり狙い撃って行くこんな距離で外す訳には行かない、こんな理想的な状態で尚且つ動かない的に外す訳に行かない、的当てすらできん奴など実戦で役に立たない。

 片手撃ちに移行する呑気に両手でホールドできる時に使えるとは限らない、やはり片手では安定しにくい約1.2kgと重い自動拳銃であるため反動もキツく感じ先ほどよりも命中時の集団円もでかくなる。


 あらかただいたいの撃ち方は試せた、やはり余り使わないためかとても良いとは言えない、練習を続けなければ、すると隣のブースからトレーサー混じりの銃弾が的に向かい、イヤーマフと耳栓の防御を超え轟音が鳴り響く、とんでもない銃声だきっと機関銃でも景気良くぶっぱなしている。

 既に四十発以上撃っている、こんな景気いい奴の顔を拝みたくなった、この轟音ですっかり集中のゾーンは終わってしまった。

 そっとスチェッキンの安全装置を入れホルスターに静かに入れ、静かに隣を覗く。

 そこにいたのは何時かの溶接帽のような鉄帽に重厚なボディアーマーにRPKの奴だった。

 ババババッババババと気持ち良くドラムマガジンの中身を吐き出して、ホォーとハイテンションに雄叫びを上げながら撃っている、ハイテンションながらちゃんと的に当たっているなかなかの腕だこんなに撃てば手が痺れて命中率が低下するはずなのに。

いかんまじまじと眺めていた、こんな雄叫びを上げて撃っているんだ、きっと何か嫌なことでも有ったのだろうそっとしておこう。

 邪魔しても不味い、そそくさと空薬莢集め受付へ行こう。


「空薬莢リサイクルお願いします」

空薬莢の入ったビニール袋を受付のおっちゃんに渡す


「はいよ、結構撃ったな、9×18だけだよな」


「ええそうです、六十二個ですよ」


「確かに六十二個しっかり入ってるな、\434-だ、そっちでこんくらい撃ったらかなりいい値段になるぜ」


「勘弁してください此の弾代バカにならんですよ」


「違いねぇお前の階級じゃ辛いか、あの野郎みたいに景気良くなりな」


RPKの銃声を聴きながら、小銭を財布にしまい

「にしてもあの人すごいですね、景気良くやってる」


「あぁ案山子の野郎か!あいつは何時も来る度に爆音を流しやがる迷惑な奴だ」


「かかし?って何ですか?」


「最近来たヤツはわからねぇか、あのバカみたいにRPKぶっぱなすアルティン頭野郎の通り名だ、理由はな...」

ババババッババババ...

「うるせぇなバカやろぉこっちゃは喋ってんだ、案山子がよチッまあ、あの野郎と組んだら聞いてみな」


「えぇ、ありがとうございます」


やっぱり探索者は変わった人は多い、まさか重厚な装備で撃ちまくる者だからモンスターの敵意集めて、皆そっちに向かうからとか無いよな、そんな危険なことするヤツなんているわけない。

 一時間ちょっといたようだ、コーヒー片手にタバコを吸っていたらすぐだ。


タバコ休憩をしたしさて、いい時間だ会場の会議室向かうか。

 ちらほらと人のいる会議室で待つ、ガンとドアが鳴らしてはいけない音をたてて

 「やぁ、重役出勤ご苦労さん、死な無くなるかもしれ...」「何しとんじゃゴラー」全速力で怒りを露にしながら女性の職員が走ってきて、アルティン頭の男に彼女が持つバインダーを、アルティン頭に全力で叩きつける、パーンっと良い音が会議室に響く。

 「うわ、暗い」アルティンの装甲バイザーが降りて視界がいきなり暗くなり驚く男と「あと重役出勤じゃありません!ここに来ていただいた方々は、規定の時間を守って救急救命訓練を受講される方々です」やらかしたアルティン頭に怒る女性職員。


「あのですね、何回備品壊せば分かるのですか!今回のドアとこのバインダーも次の報酬から修理費として引きますね」


「早瀬ちゃんまあまあ落ち着いて、ほらドア壊れて無いでしょ」

アルティン頭がドアを開けたり閉めたりして、壊れて無いと動かしてる。

 アルティン頭が閉め切った時バキバキと音がなり廊下の方に、無惨に倒れるドア、会議室は絶句に包まれ早瀬職員は笑顔で壊れたバインダーを持ちながら腕を組んでいる。


「は、早瀬さん話せば分かるの、話せば分かるの、これはちょっとした事故なんだ、ちょっとこう、閉めたらさ外れちゃったんだよ、ね?ノーカウントだノーカウント早瀬さんなら分かるよね?」


「話はそれだけですか?倉守少尉あなたは話せば分かると言いましたよねでは、私は何が言いたいか分かりますよね?」


 早瀬職員の裏に般若が見えるのは幻覚では無さそうに見える、早瀬職員は怒らせ無いようにしよう疲れるとかおばさんとか思ってすみませんでしたと心の中で謝る。


「今月ちょっとキツいからさ何とかなりませんか早瀬さま」


「ギルティー今月は固形レーション生活してください」


「あの尊厳破壊糧食は勘弁してください早瀬様!」


重厚な装備をしている大の大人がアルティンを被りながら土下座をしている、シュールな光景だが恐ろしい審判が下される間近である。

 尊厳破壊糧食と言われる糧食は、ジシス傘下の企業が作りあげた完全食で栄養、カロリー、軽量、保存性と探索者や軍向けに作りあげた食べれる兵器だ、信じられない程に不味いと評判だが、冗談だと思い買ったらホントに不味かった、完全に薬品だと思い食べれたらいいのだが、絶妙に食品しているから、最低なディストピア飯だ。

 

「言いましたよね?ギルティだって頭の中空っぽになりましたか?倉守少尉」


土下座しながら絶望に撃ち震えるアルティン頭。


「おっと忘れてました、救急救命訓練を受講される皆様失礼しました、私は今回補佐をさせていただいています早瀬と申します、今回講師となるそこら辺で転がっている案山子やスケアクロウとか言われている倉守少尉です、この愚か者はなんと衛生兵でもあるのですバカですが。」


「ディストピア飯は嫌だディストピア飯は嫌だ...うぅ」

ボソボソと地獄のような現実に潰されるアルティン頭。


「いい加減立ってもらっていい?」


「ハイワカリマシタ」

早瀬職員に恐怖し直ぐに行動しテキパキと講義の準備にかかるアルティン頭、アルティン外した方がやり易そうだが頑なにアルティンを取らない。

 そんなこと考えながら講義が始まる、一時間程度だが一番今までで一番理解できた、定期的にアルティン頭と早瀬職員とのコントが始まるためか時間の進みはとてもいい、いい講義だった。

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