人の心の淡さを描く

本作の主題は恋。しかし劇的ではありません。

十代の恋は青く、二十代の恋は打算的。その二つが混じり合う年齢に主人公を置き、どちらか片方に染まらない細やかな心象描写を連ねます。

淡いものを平面的に描いては心に残らないものです。立体的で陰影ある描写で、淡いものを読者の心中に刻み込みます。

キャチコピーは「もらった金魚はみんな、死んでしまった」。これがニクいです。明かせばネタバレとなります。読み終えたとき、なぜその描写が冒頭にあるのか分かります。

尺は短く、描いているのはありふれた現実なのに、読み終えた後にずしりと残ります。

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