第2話

園内を歩いていた。

 夕方の5時になった。

 その時だった。

 園内のキャストが、こうアナウンスをした。

「今日、これから、ここで、何かダンスを踊ってみませんか?」

「曲に合わせて、踊りませんか?」

 と言った。

 ダンサーの女性が、言った。

 しかし、派手な衣装を着たサンタクロース仕様の衣装だった。

 その時だった。

 急に、ダイスケは、思い出した。

 そうだ、と。

 ヨシカは、EXILEの岩田剛典が好きだとか言っていたな。許せない。俺は、子供のころから、ずっと母親に言われて、バレエスクールの子供と踊っていた。ヨシカは、オレにめがけて鼻水を飛ばしたが、今日は、本当は、俺のワガママにしても良いはずだ。

 確かに、ヨシカは、指原莉乃に似ている。

 そして、ヨシカは、色っぽいのは認める。

 昔、ジュンコにダンスを教えていたが、あの女は、教育学部の軽そうな男と一緒になった、それが、許せない。

 あいつは、今は、都立高校の教頭になった。

 許せない。

 …

 そうだ、リベンジしよう、

 …

 なんてわけのわからないことを、ダイスケは、考えていた。

「はい、します」

「え、ダイスケ、出来るの?」

「…」

 …

 曲に合わせて、ダンサーが、踊った。

 観客が何人かいる。

 そして、ダイスケは、呼吸を静かにして、急に、手足を交互に動かして、踊り始めた。足をあげて、手も挙げて、動いた。

 観客のみんなは、賑やかになった。

 拍手が、パチパチパチパチと湧いた。

 3分の曲が、終わって、司会の女性が

「このお客さんに、もう一度、拍手を」

と言った。

 そして、拍手が沸いた。

「すごい、ダイスケ」

 とヨシカは、言った。

 クリスマスのコンサートだった。

 ヨシカは、興奮をしていた。

 そして、遊園地から帰って、京急快特で、横浜駅から品川駅に向かおうとしていた。

 快特青砥行きが、三崎口方面から横浜駅のプラットフォームに入ってきた。いしだあゆみ『ブルーライトヨコハマ』の「歩いても歩いても小船のように」のメロディーが流れた。

 もう何もないかな、とダイスケは、思っていた。

 その時だった。

 横にいたヨシカは、少しだけ、ダイスケの首にそっと手をあてて、ちょこんとキスをした。それから二人は、付き合いを始めたらしい。

 2023年12月24日の夜から。<終>

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クリスマスコンサート マイペース七瀬 @simichi0505

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