失敗作の姉
姉と私と妹と、私たち三姉妹の体は氷でできている。
彫刻家だった父の手にかかれば木も石も土もすべてが生物の体を得ると同時に魂が吹き込まれ、動き出すのだ。おかげで私たちの住む庭には多種多様な生物が溢れている。
昔、どうしてそんなことができるのか父に聞いてみると、彫ったものに命を与えているのではなく、魂が眠っている場所を見つけて彫っているのだと返答があった。
一番最初に作られた姉は失敗作で、太陽の光を浴びると体が溶けて水になってしまう。そのため姉は一年中冷蔵庫の中で眠っていて、起きるのは年にひと月ほどだったので、私はあっという間に姉の年齢を追い抜いてしまった。
末の妹に年齢を追い抜かれた年、姉は冷蔵庫に入ることをやめた。
夏が近づくにつれ溶けて小さくなっていく姉に、私たちは冷蔵庫に戻るよう言ったが、姉は聞き入れずに夏まで生き、咲き誇る向日葵を見て満足そうに消えた。
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