幽霊部員

卒業式の日、部長に卒業おめでとうございます、と言いに行ったら、部員の名簿を渡された。聞けば来年度も部活動を続けるためには活動証拠として五人の幽霊部員からサインをもらわなければいけないのだと言う。僕らの中学校に通う生徒は必ず部活動に所属しないといけない決まりがあって、しかしそれが嫌な生徒が籍だけをゆるい部活に置くのはよくあることだ。僕が所属する文芸部も例外ではなくて、部員は九名いるはずだが部室に来るのはいつも僕と先輩の二人だけ、あと七人は幽霊部員。そのうち二人は先輩と一緒に卒業するので、残り五人。来年度の部長であるお前に任せた、と渡された名簿は受け取るしかなくて、僕はおめでとうを撤回しそうになった。


名簿には名前しか書いていなかったので、三年生になった僕は名簿を片手に片っ端から教室を周り、幽霊部員たちからサインをもらっていった。しかしどうしてもあと一人が見つからない。困って先生に聞くと、どうやらそんな名前の生徒は存在していないことがわかった。彼または彼女は本当の幽霊だったってわけだ。


そんな不気味な結末で僕の幽霊部員探しは幕を閉じたわけだが、この話には続きがある。自分の卒業式が近づき部室を掃除していた僕は、前部長が書いた小説を見つけた。読むと、主人公の名前があの幽霊部員と同じ名前だったのだ。


つまり僕は揶揄われていたわけである。クソッタレ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る