昔見た青
太陽がその姿を見せなくなってしまったのは突然のことだった。その日から、いつまで経っても夜は明けない。人々は始めは戸惑っていたが、そのうちに慣れ、夜を受け入れた暮らしを続け、そのうち青空の美しさを忘れてしまった。けれども私は忘れることができなかった。世界中を旅すればいつか再び青空を見ることができる場所ができるのではないかと考え、十年かけて世界を一周した。しかしそのような場所は見つからず、もう地球上に青空が見える場所などないと知った私は、さらに十年かけて宇宙船を作りそれに乗って地球を飛び出した。
宇宙は暗かった。暗黒という言葉がふさわしい。地球の隣にあるのだと理科の授業で習った金星も火星も見えず、光など一つもない。太陽が消えたからだと私は知っていた。つまり、どの星に降り立とうが、そこには夜しかないのだと。
私は太陽系の外、太陽に似た恒星がその光を放ち宇宙を照らしている場所を目指した。十年、二十年。三十年。ひたすらに暗闇の中を揺蕩う。進んでいるのか、自分はどこにいるのか、なにもわからない。気が狂いそうな日々の中で、毎日夢に見る青空だけが救いだった。
五十年が経った頃、私はとうとう新たな恒星を見つけた。太陽よりも小さいが、負けないくらい激しく燃え盛っている。私はしばらく感動のあまり涙を流しながら宇宙船からそのその恒星を眺めた後、その周囲を回る惑星に降り立った。
空は暗かった。しかし、地平線を見ればゆっくりと朝がやってくるのがわかる。
私は微動だにせず、何時間も色が変わっていく空を眺め続けた。やがて夜が明け、空は一面の青。念願の青空だ!しかし、昔見た青とはどこか違う気がした。
ああ、やはり、地球でしかあの青空は見れなかったのだ。
「あの日見た青空が最後になるのなら、もっとちゃんと見ておけばよかった」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます