遠い星から来たあなた

太陽の光から栄養を受けているから、食事は必要がないのだとあなたは言った。言ってすぐにその口にアイスの乗ったスプーンを突っ込むものだから、じゃあどうして今アイスを食べているのと聞くと、これがないと生きられないからなどと矛盾したことを言う。そういうものらしい。


書くものが欲しいと言うので、学年が変わって使わなくなった数学のノートをあげた。あなたは途中まで書かれた数式を興味深そうに眺めたあと、白紙のページに何かを書き始めた。あなたがいなくなったあとで、それは遺書だったと知った。


私があなたについて知っていることは少ない。地球から遠く離れた星で生まれ、その星一番の研究者として名を馳せたが、突如星全体に流行した体が宝石になる病に対抗できず、病気の原因が星に年中吹きつける黄金風であると突き止めたときにはもう病気になっていないのは彼一人だったらしい。しかし星を脱出してすぐに彼も病気を発症し、体が動かせなくなって地球に墜落したのだと語った。私はその墜落の軌跡を見て隕石だと勘違いし、裏山に様子を見に行ってあなたに出会ったのだ。その頃にはあなたが動かせるのは右腕だけだった。あなたはその右腕でスプーンを握ってアイスを食べ、ノートに字を書いた。


──私は砕けて、光と共に飛び散って、宇宙の塵となる。そのとき、たった一欠片でも良い、どうか拾って離さないで。そしていつか、私を故郷の光に戻して。


ノートに書かれた文字はきっと彼の星の言葉なのだろう、一つも読むことができなかったが、大きく書かれたパフェの絵だけはわかったので、私は声に出して笑った。


いつか彼の星に行って、散らばった輝きすべてを埋葬してあげたい。残されたものたちからこの言葉を解読できるかもしれない。あなたには私にどんな言葉を残したのだろう。私がこっそり彼の欠片のうち一つを指輪にしたような、そんな感情だったら良いと願う。 

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少し不思議な掌編集 @inori0906

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