彼女の天気予報
今日は傘をさしていた方が良いよ、と彼女は言った。
空は快晴で、天気予報でも降水確率は〇パーセント。でも彼女の予言はよく当たるので、私は素直にうなずいて、青空の下、傘をさして学校に向かった。
しばらく歩いているとぼと、と目の前に何かが落ちてきて、ころころ転がり私の靴に当たって止まる。
なんだろうと見るとそれは林檎だった。見上げると、傘の透明なビニール越しに大きな林檎の木が目に入る。
枝葉に所狭しとなった立派な林檎に見惚れていると、まるで私が重力を発しているかのように、林檎が一斉に私に向かってぼとぼとと落ちてきた。
彼らは傘の上で跳ね、あるいは転がって、地面に落ちていく。
私は慌てて傘を持つ手とは逆の手でトートバッグの口を広げ受け止めるけれど、トートバッグはすぐにいっぱいになってしまって、あとはただ地面に落ちてゆく林檎を見つめるしかなかった。
しばらくすると林檎の木の持ち主がやってきて、林檎を受け止めた私に感謝し、お礼にと一番大きな林檎をくれると言う。
学校に着いて彼女にその林檎を見せると、彼女はね、傘を指していた方が良かったでしょう、と言って笑った。
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