走馬灯シネマ
友人が事故に遭った。重体でしばらくは面会謝絶だったが、ようやく容体が安定したとのことでお見舞いに行くと、走馬灯を見たのだと言う。走馬灯ってなに、と尋ねた僕に、彼は死にかけると自分の過去がまるで映像のように思い出されるんだよと教えてくれた。彼は僕が一年前に記憶喪失で倒れていたところを助けてくれてからずっと仲良くしてくれる人で、そうやって僕が訪ねて彼が教えてくれるのもいつもの光景だった。
さて、走馬灯のことを知った僕は、それにとても興味を持った。果たして過去の記憶を全て失ってしまった僕でも走馬灯とやらは見られるのだろうか。もし見られるのだとしたら、失った記憶を取り戻せるきっかけになるかもしれない。気になった僕は、早速一度死にかけてみることにした。彼のお見舞いから帰ってきた自宅、ベランダに出て、そのまま柵を乗り越え飛び降りる。僕の部屋は3階だから死にはしないだろう。
勢いよく体を打ち、目の前が真っ暗になる。気がつけば僕は映画館のような場所にいて、一人座席に座ってスクリーンを見上げていた。きた、と身構えるが、しかしいつまで経っても、スクリーンは黒一面のまま、なんの映像も映しはしない。
やがてスクリーンの中心に白い文字が浮かび上がる。
【そのデータは存在しません】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます