走馬灯シネマ

友人が事故に遭った。重体でしばらくは面会謝絶だったが、ようやく容体が安定したとのことでお見舞いに行くと、走馬灯を見たのだと言う。走馬灯ってなに、と尋ねた僕に、彼は死にかけると自分の過去がまるで映像のように思い出されるんだよと教えてくれた。彼は僕が一年前に記憶喪失で倒れていたところを助けてくれてからずっと仲良くしてくれる人で、そうやって僕が訪ねて彼が教えてくれるのもいつもの光景だった。


さて、走馬灯のことを知った僕は、それにとても興味を持った。果たして過去の記憶を全て失ってしまった僕でも走馬灯とやらは見られるのだろうか。もし見られるのだとしたら、失った記憶を取り戻せるきっかけになるかもしれない。気になった僕は、早速一度死にかけてみることにした。彼のお見舞いから帰ってきた自宅、ベランダに出て、そのまま柵を乗り越え飛び降りる。僕の部屋は3階だから死にはしないだろう。


勢いよく体を打ち、目の前が真っ暗になる。気がつけば僕は映画館のような場所にいて、一人座席に座ってスクリーンを見上げていた。きた、と身構えるが、しかしいつまで経っても、スクリーンは黒一面のまま、なんの映像も映しはしない。


やがてスクリーンの中心に白い文字が浮かび上がる。


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