集落同士が深い森に隔たれている──そんな狭い世界で、帰巣本能を持つ「鳩」と呼ばれる役割の人間がいた
獣を狩るにも、木の実を集めるにも、彼らが必要だ
主人公の少女は、母親のために、鳩になるための試験を受ける
そんな、作者の個性溢れる世界観の中で、物語は始まっていく
本作品の際立つ点は、まさにそのオリジナリティだ
世界観、物語だけでなく、文章力や構成に至るまで、他に類を見ない独特なものとなっている
異世界ファンタジーのテンプレートとは真逆を行く、誰にも真似することのできない独創性
それは、作者の大きな強みだ
なにせ、一度味わい、気に入ったのならば、その感覚は、本作品や本作者の別作品でしか摂取することができないのだから
一度、この独特な読書体験を味わってみてはいかがだろうか
ハマればきっと、一生忘れられない作品となるだろう
※アカウント利用停止措置を受けたため、本レビューは再投稿となります
鳩と呼ばれる能力を持った人間たち、通常であれば二度と戻ってこられない森、そして人々を縛る不可思議なルール……極めて隠喩的、ついつい深読みしたくなる要素盛沢山な物語です。
特に序盤は、それにより起因するどこか湿気った居心地の悪さや、真相を知りたいという好奇心がページをめくる推進力に化ける怪作です。
個人的には『新世界より』を思い出させる湿度や雰囲気で、特筆すべきものがあると感じました。
しかしながら、ただ雰囲気で押すのかと思えばそうではなく、物語の本質や主張は極めてシンプルで、ヒロインが男の子と結ばれたい、ただこれ一つです。
そんな彼女が不気味で暗い、怪しげな世界観をスパッと割って突き進み、牽引していきます。まるでジブリヒロインのようです。
ただ独特なだけでなく、ヒロインのある種執着とも呼べる『あかるさ』も本作の注目といえるでしょう。
ともすれば怪しげな世界観と、それすら吹き飛ばして邁進するヒロインの力強さ。このページを訪れたのならば、ぜひともこの作品の森へ飛び込んでいただきたいものです。
……ところでまだ何も知らない純粋無垢な少年をかどわかしめくるめく新世界へ連れていく年上お姉さんの森はどこへ行ってしまったのでしょう? キャッチコピーにはそんなことが書いてあった気がするのですが……森の中?
森に支配されていると言っても過言ではない世界。
集落が深い森で分断されているせいで行き来が困難であり、大半の人間は狭いコミュニティで生活することを余儀なくされています。
森を唯一歩ける「鳩」と言う職業に就いた者も、自分が生まれた土地へ帰巣本能で導かれるだけなので、集落間を往復するには別の鳩の力が必要となります。
そんな中で、「一度通った道を必ず記憶する」という能力を持つ主人公・ユミ。
自由に集落間を移動できる規格外の能力を持つ彼女は、心を通わせた少年との幸せな未来を掴む為に奮闘します。
こちらの物語を拝読して、上京した頃の自分を思い出しました。
新潟の田舎で二十代後半まで暮らしていて、狭いコミュニティにうんざりしつつもそこを飛び出す勇気が持てずに、これが普通なんだ、みんな我慢しているんだと自分に言い聞かせて生きていました。
父の死後に土地を処分して姉が居る東京へ母と共に引っ越したのですが、知らなかった新しい世界に目が開けました。
都会と田舎、それぞれに良い面と悪い面が有ります。都会に住み続けるのも良し、田舎に帰るのも良しです。両方を知った上での選択ならば。
片方だけで結論を出すのはもったいないなと思うのです。
世界を広くするのは自分自身。それを思い出させてくれた作品でした。
語るととても長くなるので、第一章終了までのレビューになっちゃいます。
まず、このお話を読むこと、すなわち、森の中に入るに等しいです。
それほど文章から森の雰囲気が出ています。
ユミが「鳩」を目指す物語なのですが、それがまた予想できない展開が挟まります(鳩が何かは読めばすぐ分かります)。
ちょっとした理由で見知らぬ村にたどり着いて、怪しい人に別人と間違われたり、そこで特別な感情を抱く相手と出会ったり、ユミの試験官を勤める二人がアレコレ、ハラハラ展開や、出産に立ち会ったり……と、イベントがてんこ盛りです。
随分端折ったのですが、これでもまだ「序」のお話です。
詳しいところは、ぜひ、その目で確かめてみてくださいね。
ついに鳩になったユミ。
ユミをソラと見間違えるアイの謎。
森を放浪(?)するミズ。
果たして、ユミとキリの再会はあるのか……?
【次回】鳩の縛め 第二章 【雛】
お楽しみに♪
(キャッチコピーとは全然違う)世界観が非常に独特。
舞台は、普通の人が入ると必ず迷うという不思議な森。
その森では「鳩」と呼ばれる、帰巣本能を持つ者が森を行き来し、村の人々の生活を支えていた。主人公の13歳の少女・ユミは母を医者に連れて行くため、鳩になるべく「孵卵」という過酷な試験に挑む。
それは、眠らされている間に運ばれた場所から、自分の本能だけを頼りに村に帰りつく、というものだった。しかし、ユミは森の中でサバイバルをしながら快適な拠点を見つけてしまうわ、母親に虐待されていた男の子を救出(誘拐)するわで、なんと250日も過ぎてしまうという逞しさ。晴れて鳩になれたあとも彼女の周りでは様々な事件が起こる。
感想:ユミという小さな少女の知恵や勇気、葛藤などが丁寧に描かれていて、その周囲の森で生きる村人たちの息遣いまで感じられるほどの緻密な描写がすばらしい。
いろいろな形の愛が味わえる物語である。
オススメです🕊️🕊️🕊️
皆様がよく想像する異世界ファンタジーとは一線を画す作品です。
文章や物語の作りが非常に秀逸であり、自分は書店に並べられている本を読むつもりで拝読させてもらっています。
この作品を一言で説明することは自分では表現しきれません。
ユミという一人の少女の成長を追う物語ともいえますが、様々なキャラクター達を通して描かれているのは綺麗事などない厳しくも美しい「愛」
「鳩」というこの作品世界において稀有な能力を持つ存在と、それを縛る「縛め」に隠された謎。
これらすべてを蛇足感なく非常に高いレベルで纏められるのは凄まじい。
コメント数からも分かる通り、それだけ色んな楽しみ方が出来る作品です。
まず初めに言うとすれば、ただのイチャコラ小説ではありません。
無垢から始まった主人公は、恋人のために成長する。
そういった血生臭い努力の過程をみたい方に、ぜひお薦めしたいです。
また、情景が丁寧に作り込まれています。
まるで、登場人物の隣を歩いている気分になります。
そしてなにより、主人公の恋愛だけが全てではありません。
周りの人たちの事情も綺麗に書かれているのが、素晴らしいです。
もしかしたら、推しカップルが見つかるかもしれません。
『愛』という言葉を、様々な観点から見ている作品だと思いました。
ただ美しいだけではなく、殺意や憎悪も表現されています。
どこか現実味を帯びている作風に、自身の考えを共有したくなるでしょう。
正に、応援コメントありきの作品とも言えます。
主人公たちの恋路がどうなるのか、見守っていきましょう。
主人公のユミが母のため、鳩と呼ばれる職業?存在?になろうとする所から始まる物語です。
誰しもが迷う森……それを村まで迷わず進むことのできる鳩。鳩にも掟なり、すべての村に行けるわけでもなかったりと、奥深い設定が多くあり、考察の好きな方はどはまりする事でしょう。
主人公のユミが出会うキリという少年との関係性がおねショタ感あり、好きな方は悶絶するかもしれません。
年齢はそこまで大きくは変わらないんですけどね。
たまにホラー感もあれば、気に入らない者達も出てきたりと、キャラクターも魅力的です。
コメント数の凄まじさにも驚かされます。コメントせずにいられないストーリーなのでしょう。
一応自分もコメント残してます。語彙力ないですが(笑)
ストーリーも展開読めないですし、重厚なストーリー、おねショタ、独特な世界観が好きな方におすすめします。
ちなみに自分の推しキャラは監視員的立ち位置の、クイとヤミのお二人ですかね。
読み始めた当初は、主人公が苦難を乗り越える成長物語かと思いました(し、その認識も完全に間違いではないのかもしれません)が、話数を重ねていくごとに、主人公・ユミさんの特異性が玉ねぎの皮を剥くかのごとく浮き彫りになっていき、きっとそれはテーマのうちのひとつでしかなく、沢山のメッセージを含んだ物語なのだと思わされます。
また、先を見せてくれないところも、この作品の面白さに拍車をかけています。
ヒントはどこにでもある(というかとても丁寧に置いてくださっている)のでしょうが、下手に考察せずに予測不能な展開を楽しむのも、楽しみ方のひとつではないでしょうか。
この先も、ゆっくりじっくり味わわせていただきます!
少女のユミが困難な試練に立ち向かいながら、自分の可能性と人生の目的を見出していく心温まる冒険譚です。
ユミの母への愛情と、友人のソラへの友情が物語を通して描かれており、心に深く響きます。また、イチカでの生活や森の中での出来事など、自然と人間の関わりが生き生きと表現されているのも魅力的です。
ユミは時に迷いや挫折を感じながらも、最後まで前を向いて進み続ける勇気と強さを持っています。その成長の過程は勇気と希望を与えてくれるでしょう。
世界観や登場人物の描写も丁寧で、物語に引き込まれます。特にユミの心情の機微が繊細に描写されており、感情移入しやすいです。
冒険、友情、家族愛、自己探求などの普遍的なテーマを織り交ぜた、心に残る素晴らしい作品だと思います。ユミの今後の冒険と成長が楽しみです。