ある広い世界のお話

 青年と少女の二人は海へとこぎ出し、力を合わせて島を囲う雷雲へと挑んだ。


 強い雨と風そして轟く雷に晒されて、何度も転覆しそうになりながらも、それでも諦めず二人は必死に船を操縦した。


 どれくらいそれは続いていたのか。


 気が付くと雨が止み、波が穏やかになっていることに気が付いた。


 青年が顔を上げると、そこには青い海が広がっていた。


 まるで空の果てまで続いているような、青い青い広大な海。


 そこには何か目印になるようなものは何も無く、何所へ向かえば良いかもわからなくて途方に暮れてしまいそうだ。


 そんな海を青年の前に立っていた少女も一緒に眺めていた。

 ずっとずっと焦がれていた外の世界。


 それを前にして、今少女は何を思っているのだろうか。


「さてと――」


 そんなことを考えていたら、不意に少女が青年に向かって振り返った。


 雨と波しぶきを被って全身濡れ鼠になった姿で、彼女は青年に手を差し伸べた。


 この先、一体どうなってしまうのかそれは誰にもわからない。


 もしかしたら、このまま何所にもたどり着けず、海の上でのたれ死んで終わるかもしれない。


 いつか島を出たことを後悔する日が来るのかもしれない。

 ただそうだとしても、今この時この瞬間。


 青年は一切迷うこと無く、少女から差し出されたその手を取る。


「――さぁ、次はどこにいこっか?」


 途方に暮れてしまうほど広い海を背にしながら、少女はそう言って眩しいほどの笑顔を浮かべていた。


fin





――あとがき――


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君の夢へ愛をこめて 川平 直 @kawahiranao

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