腹黒聖女は嘘とハッタリで自分の無力をごまかす

 世界最強の聖女を母に持ち、『聖女をも超える聖女』としてチヤホヤされ続けてきたメリル・クライン。14歳の誕生日に初めての悪魔祓いに出向いた彼女は、そこである重大な真実に直面する。彼女には母のような悪魔と戦う力が存在しなかったのだ!

 目の前には自分を睨みつける悪魔、後ろには期待の目でメリルを見る同行者たち……この絶望的な状況で彼女は起死回生のアイデアを思いつく。口八丁で目の前の悪魔の無実を証明できれば、戦闘を回避できる!

 表向きは綺麗ごとを並べながら、腹の中では自己保身しか考えてないメリルのキャラがとても良い。結界で悪魔を閉じ込めたフリをしつつ「ハリボテの結界が破れてこの悪魔が新たな被害を出そうが、そんなのは私の知ったことではない。コネで免状を出した教会の偉い人が悪い」なんてとんでもないことを考えるかなりの腹黒っぷりだ。

 終始こんな感じで嘘とハッタリを積み重ねその場しのぎを続けていくメリルだが、なぜかこのハッタリが意外な真実に繋がっており、結果的に周囲から認められていくというストーリーも大変面白い。クセのある魅力的な主人公と捻りの効いたストーリーが織りなす完成度の高いファンタジーだ。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎憲)

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