第11話 再開
足音の主がやってきた。
私の家にナッツを食べに来るももんがだ。
「貴方はモモね」
私はモモの頭をそっとなでた。
モモの大きな瞳からぽろぽろ涙がこぼれる。
「千鳥しゃん・・・」
そうして私は社に向き直った
「私は貴方を覚えている。泣き虫で、寂しがり屋で、なのにすごく怖がり。私の幸せを一番に考えてくれて怖くて逃げ出しちゃっただめな人」
「・・・」
後ろにいる大黒は黙ってそれを見守ってくれていた。
「ナナシ!!ナナシ!そこにいるんでしょう。私思い出したよ。お願い。出てきて。」
必死に懇願すると、しばらくして社の扉がカラリと開いた。
「千鳥・・・どうして。貴方には綺麗な世界が似合っているのに。どうして私の元に帰ってきてしまったんですか。」
ナナシは今にも泣きそうな顔をして私を責めた。
「愛してるからだよ。ナナシを愛しているから。私は何度忘れても思い出す。貴方以外いらない。」
思いの丈をぶつけると、ナナシは苦しそうな、つらそうな表情をしながら私に近づいてきた。
「ごめんなさい。私の勇気がたりなくて。千鳥、愛しているからこそこうするんです。」
そう言うとナナシは人差し指を私のおでこにあてた。
「はいストップ。そういうのなしにして」
いままで静かに成り行きを見守っていた大黒がナナシの腕をひねりあげながら言った。
「また同じ過ちを繰り返すのか。おまえが意気地なしなのは分かっているけどやり方が汚いぞ。千鳥の気持ちも考えてやれ」
ぎりりと力をさらにこめて大黒はナナシをしめあげた。
「なぜ思い出したのかとおもったら貴方でしたか。大黒天。」
ナナシは私には見せたことのない鋭いまなざしで大黒をにらみつけた。
「俺も千鳥を愛しているからね。俺を選んでもらうためにはあんたとのこと、ちゃんとけじめつけないといけないと思ったからここに千鳥をつれてきたんだよ」
「よけいなことを。貴方なら彼女を幸せに出来るから、私のことは放っておいて千鳥と一緒になればよかったのですよ」
「あんたとの婚姻関係が解消されていないのにか?神界での重婚は重罪だ、おまえも分かっているだろう。おまえと千鳥の婚姻は正式なものだ。本当に千鳥をおまえから解き放つつもりだったら、婚姻を解消すべきだったんだ。だけどお前はそれをせずに千鳥の記憶をけして、中途半端な状態で放りだした。」
「・・・それは」
「未練だろ?」
「・・・」
ナナシは黙りこくって足下を見ている。
大黒はなおも続けた。
「婚姻関係を心の支えに、人間界で人間の男と結ばれて子をなし、幸せに暮らしてくく千鳥を見守るつもりだったんだろう?」
「・・・その通りです」
私は驚いた。ナナシはそんなことを考えていたのか。
「なんて勝手なことを!ナナシは私の気持ち少しは考えてくれなかったの…愛しているのに、ひどいよ」
涙がぽろぽろこぼれ落ちる。
大黒がそんな私の頭を優しくなでてくれた。
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