第17話 家族
楽しい時間はあっという間に過ぎる
宴は夜更けまで続いたが、とうとうお開きの時間になり
皆々頬を上気させて、提灯に火をともして岐路についた。
その明かりが見えなくなり、
辺りが闇に包まれた頃、
ナナシと千鳥のは手を握り合い、縁側で蛍を眺めた。
「ようやく二人になれましたね。」
「そうだね、ナナシ、私まだ少し怒ってるんだよ
私のこと、遠ざけたこと」
「よかれと思って・・・でも、反省しています。
私は貴方に出会ったあの夏の日から、
もう一人でいられなくなったというのに。」
私はナナシをふんわり抱きしめて
髪をなでてあげた。
「寂しがり屋のくせに。本当にだめな神様。
もういなくなっちゃだめだよ。」
「はい・・・」
「どんなに引き離しても、私は必ずもどってくるからね」
「はい・・・」
私とナナシは見つめあい、そうっと口づけをかわした。
「ちゅーしてまし!!千鳥しゃんと主様が・・・もが」
「空気よみなさいよ!のぞき見は遠くからこっそりが鉄則でしょ」
モモは桜に怒られてしょんぼり
私はそんな二人をみて笑ってしまった。
(ああ・・・かえってきたんだ)
この社に、私とナナシ、モモに桜に招き猫
みんながそろってもう一度家族になれたこと、
幸せで嬉しくて胸がいっぱいになった。
「おれもいる」
忘れていたけど大黒も柱の陰からそうっと私とナナシを見守っていた。
「大黒もいっしょに家族になる?」
大きな大黒が柱の陰からはみ出しながらも必死に隠れているのが可愛くて
笑いながらといかけると
「なるなる」
いつものテンション低めの声で家族参加宣言をした。
「また家族がふえたね」
「そうですね、この社も賑やかになりました。
千鳥がここにくるまでは、
私一人で生きていくことに何の疑問ももっていなかったけれど
あの頃の自分に言ってやりたい。
家族のぬくもりは素晴らしいって」
ナナシがそう言うと大黒も柱のかげから
「そうだね。家族・・・あったかい」
そう言って私とナナシの横にすわった。
「家族・・・素敵だね」
「家族・・・素敵ですね」
「家族・・・素敵」
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