第16話 2人

一方その頃、ナナシと大黒は2人並んで酒を酌み交わしていた。


「まさか貴方が千鳥を再び私の元へ導いてくれるとは思いませんでした。てっきり、あのまま自分のものにしてしまうのかと・・・」


「俺そこまでガツガツしてない。それにあんたが婚姻解かずにいたから、どっちみち手出しできなかった・・・もしかしてその為にとかなかったの? 」


ナナシは仄暗い笑みを浮かべてちびりと酒をのんだ。「本当に、願っていたのです。千鳥の幸福を。

だというのに彼女を完全に解き放つことができなかった。

自分の身勝手さに嫌気がさします。」


ナナシがぽつりとつぶやくと、

大黒は何も言わずにナナシの開いたお猪口に酒を注ぎ、

背中をポンポンとたたいた。


「過去のことを悔やんでもしょうがない。

あんたはライバルだけど、千鳥の大切な者だから

おれにとっても大切。

だから今のこの幸福をかみしめて笑え。」


ナナシは注がれた酒が揺らめくのをみつめ、

そしていろんな感情をのみこむようにグイと一気にあおった。


「貴方は本当に好い神だ。」


大黒はもう一度ナナシの背中をポンポンとたたき

自分も酒をあおった。

蛍が舞い、提灯の明かりに照らされて

闇夜に淡く照らされる千鳥の笑顔をナナシと大黒は眺める。


やがて木霊達が木を鳴らし、

風の精達はそれにあわせて笛をふく


二つの音が合わさって涼やかな音楽となり

辺り一面光と音にあふれて

皆が踊りはじめた


「ナナシ、大黒、一緒に踊りましょう」


千鳥に誘われ、ナナシと大黒も立ち上がり、

皆の輪に加わる。


そうして皆で踊り、歌い、たのしい時間をすごしたのだった。



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