第15話 宴

水女が香りのいい酒樽を、何個も運んでくる。

山の神々も料理や果物を持って集ってきた。


貧乏神はどうやら人間には嫌煙されているが、神々や妖怪にはすかれているようだ。


「すごいね、ナナシ。こんなに沢山の神様や妖に祝ってもらえるなんて、どうしよう。嬉しくて涙が出てきちゃった」


私はナナシが好かれていることが嬉しくて涙が溢れてくる


ナナシはそんな私を後ろからふわりと抱きしめて、そっと涙をぬぐってくれた


「いちゃいちゃ反対」


そこへ大黒が現れて文句を言う。

手には綺麗な包みをもって。


「千鳥に贈り物」


そう言うと、包みをはらりとあけて、中身を私に見せてくれた。


「わあ、綺麗な練切り」


そこには朝顔の練切りがぎっしりつまっていた。

紫や青、薄ピンクの花

それがキラキラと輝いていた。


大黒はその中の一つ

紫の花をひとつつまむと、私の口元にもってきた。


「あーん」


あまりに自然にそうするから、私は口を開いて綺麗な花を口に含んだ。


一口

それだけで口の中には上品な甘さがひろがり、舌の上でほろりととろけるなめらかな餡。

私は歓喜した。


「おいしい!!こんな美味しい練切り食べたことがない。」


「だろう。俺の社に仕える、練切り道具の付喪神が作ったものだから。餡も腕前も一級」


そういうと、大黒は私に食べさせたときに指についた餡を

ペロリとなめた。


「大黒天、度が過ぎますよ」


とたんナナシが聞いたことのないドスのきいた声で大黒を威嚇した。


「やくとく」


だけど大黒は全く気にする様子はない。

どこまでいってもマイペースな男だった。


「もう、ふたりとも喧嘩しないの。今日はお祝いの日なんだから。仲良くしよう」


「そうそう祝いなのにカリカリしない」


大黒が私に続いてナナシに言う。

逆効果だった。

ナナシは私をぐいと引き寄せるとぎゅうぎゅうと抱きしめる。

ん?なんだかお酒くさい


「ナナシ、もしかして飲んでる?」


「のんでません。・・・・少ししか」


酔っ払いだ。

完全に酔っているからこんな大胆な行動をしているのだろう。


「すみません。嬉しくてつい、水女から味見を頼まれたときにゴクゴクしてしまいました。」


「ごくごくしちゃったんだね」


「ごくごく」


私にかぶせるように大黒もナナシを茶化すように続けた。

そうしてみんなで笑い合ったのだった。ナナシは私をぐいと引き寄せるとぎゅうぎゅうと抱きしめる。


ん?なんだかお酒くさい


「ナナシ、もしかして飲んでる?」


「のんでません。・・・・少ししか」


酔っ払いだ。

完全に酔っているからこんな大胆な行動をしているのだろう。


「すみません。嬉しくてつい、水女から味見を頼まれたときにゴクゴクしてしまいました。」


「ごくごくしちゃったんだね」


「ごくごく」


私にかぶせるように大黒もナナシを茶化すように続けた。

そうしてみんなで笑い合ったのだった。それからはめまぐるしく時が過ぎていった。

社の周りには大量の蛍が放たれ、明かり取りのために木霊が作った提灯が飾り付けられた。


いつもは簡素で寂しい貧乏神の社が光り輝く場所にかわっていた。


「すごいすごい!なんて綺麗なの」


桜は喜びのあまり、春風で花びらを散らし、舞い散る花びらに提灯の光がチラチラひかってそれはそれは美しい光景だった


「食べ物も飲み物のすべてそろった。さあ、宴をはじめましょう」


ナナシがそう宣言すると、妖しや神々がおおっと声をあげ、それぞれ飲めや歌えやの宴会がはじまった。

私はそんな様子を少し離れた縁側でみていたけれど、木霊達に手を引かれ、宴の中心に連れてこられた。


「お嫁様、一緒に飲みましょう」


「こちらをお召し上がりください。お嫁様」


「さあさ、こちらに。この髪飾りをどうぞ、お嫁様」


私は一斉に声をかけられて少し戸惑ったけれど、皆に愛されていることが伝わってきたから、嬉しくて、お礼にラララマジックを歌ったり、人間界の話を聞かせてあげた。


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