第13話もう一度はじめから

「千鳥、もういちど、はじめから私と夫婦になってくれますか」


ナナシはほおを染めてわたしをまっすぐ見つめる。

私は泣いて赤くなった目をこすりながら、「もちろん」とだけ答えた。


大黒はそんなやりとりを見ながら、「さびしい。ぬくもりがほしい」そう言いながらモモを抱き上げてぎゅうぎゅう抱きしめていた。


「千鳥しゃん帰ってきてくれて嬉しいけど命の危機でし」


グルグルグルと聞いたことのない声をだして大黒を威嚇しているが、大黒は何も気にせずにモモに頬ずり。


「かわいいなー。俺にはもうお前だけだ」


そんなことを言いながらじゃれついている。私とナナシは手を取り合って懐かしい社の中に踏み入った。


私がいない間も、きちんと掃除されていたのだろう。

綺麗に整えられ、でもすこし寂しいその部屋を見るだけで、私は胸がしめつけられるようだった。


「そういえば、桜は?」


「私ならここよ」


桜は自分の寝床にしている籐のかごからでてくると私の顔に抱きついてきた。


「千鳥ありがとう。もどってくれてありがとう。大好きよ」


「私も桜が大好きよ。また会えてよかった」


ナナシも大黒もそんな私たちを見守ってくれていた。

桜は手をたたいて、宣言する。


「これから千鳥のお帰り会をしましょう!」大黒天様も一緒に、それにほかの神々やあやかしにも連絡して・・・」


「祭りでしね!いまから連絡にいってきまし」


モモは張り切って外にとびだしてしまった。


「じゃあおれは下のやつに食い物と飲み物とどけるようにいってくる」


そう言ってふらりと出て行った。


「すごい、大変なことになりそうだね」


私はナナシに微笑みかける。


「そうですね。がやがやした集まりは苦手ですが、今日は特別です。私も飲みたい気分なのです。きっと浮かれているんでしょうね」


二人笑い合い。今晩の宴の準備にとりかかった。

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