あなたのとなりのカリム

 愛される小説、というのは読者との共感性が高い。

 にも関わらず、この柊圭介という作家はいつも、ごく一般的な日本人が共感するのにはちょっとハードルが高いところを舞台に選ぶ。それは19世紀のフランスだったり、帰国子女だったり、同性愛だったり。

 それでもこの作家がこれだけの人気を得るのには理由がある。
 
 テーマに読者が共感するからだ。

 今回、柊氏が選んだ主人公はフランスの移民二世のカリム。この設定だけを見せられて、カリムに共感を覚える日本人が一体何人いるだろうか。
 それほど多くはないだろう。

 けれど、一度この小説を読み始めると、カリムの抱える悩みや彼を取り巻く人々が人種や国境を超えて、他人事とは思えなくなってくる。

 作者がそういうテーマを選んでいるからだ。

 
 兄や友人のアントワーヌは、是非は別としても、自分でその悩みを解決して歩き出しているかに見える。
 カリムは果たしてどんな答えを見つけるのか。

 もしかしたらカリムの悩みが葛藤が、あなたのとなりで悩む誰かに救いをもたらすかもしれない。

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