あなたのとなりのカリム
- ★★★ Excellent!!!
愛される小説、というのは読者との共感性が高い。
にも関わらず、この柊圭介という作家はいつも、ごく一般的な日本人が共感するのにはちょっとハードルが高いところを舞台に選ぶ。それは19世紀のフランスだったり、帰国子女だったり、同性愛だったり。
それでもこの作家がこれだけの人気を得るのには理由がある。
テーマに読者が共感するからだ。
今回、柊氏が選んだ主人公はフランスの移民二世のカリム。この設定だけを見せられて、カリムに共感を覚える日本人が一体何人いるだろうか。
それほど多くはないだろう。
けれど、一度この小説を読み始めると、カリムの抱える悩みや彼を取り巻く人々が人種や国境を超えて、他人事とは思えなくなってくる。
作者がそういうテーマを選んでいるからだ。
兄や友人のアントワーヌは、是非は別としても、自分でその悩みを解決して歩き出しているかに見える。
カリムは果たしてどんな答えを見つけるのか。
もしかしたらカリムの悩みが葛藤が、あなたのとなりで悩む誰かに救いをもたらすかもしれない。