舞台の上で浴びる喝采が、彼をただ一人の音楽家にする

本当に素晴らしい作品でした。

まず驚かされるのは、我々日本人にとって馴染みの薄い「人種間格差」「移民問題」のあるフランス社会の空気感がリアルに伝わってくる筆致です。
アラブ移民2世でありながらピアニストを目指す、主人公カリムの抱えた儘ならなさに、胸を締め付けられました。

そんな折、フランス人の友人から頼まれた伴奏者としての役目。
はじめは彼に対して引け目を感じていたカリムですが、背中を押してくれたのは意外な人たちで——

クライマックスの演奏のシーンは圧巻で、思わず涙が溢れました。
冒頭とラストでどちらもエッフェル塔を眺めるシーンが出てくるのですが、その景色の感じ方の違いを、ぜひ多くの人に味わってほしいです。

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