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双子として生まれてから、僕たちはずっと一緒だった。
外見は似ているけれど、性格は全然違う。
そんな僕たち双子を、周りの大人はよく比較していた。
兄さんは素敵な人だ。
誰が何と言おうと、その事実だけは変わらない。
見る目のない大人のせいで、兄さんは常に劣等感を抱えていた。
そしてそれに、いつも必死で
僕は、そんな兄さんの姿を見るのが大好きだった。
いくら気にしてない振りを装っていても、僕には分かる。
哀れで、酷くいじらしい兄さん。
これから先もずっとずっと、僕だけは一緒にいるからね。
なのに、兄さんにたかる
いつも窓際で一人本を読んでいる兄さんは、頭もよく、それでいて運動も得意だった。
クールで落ち着いた様子の兄さんに、好意を向ける虫が常に湧いてくるような状況。
その度に僕は、害虫を駆除するために
あの佐倉とかいう不細工な女まで兄さんに好意を向け始めた時は、いっそのこと全部燃やしてやろうかと考えたほどだった。
たまたま近所だったからって、随分と馴れ馴れしいやつだ。
けれど
少し優しくしただけで、すぐにころっと乗り換えてきた。
二度と兄さんに近づかないで欲しい。
そんな思いが通じたのか、兄さんとあの虫は、ある日を境にぱたりと関わらなくなった。
とある休日、兄さんが何も言わずに出かけようとしているのを見かけた。
僕もついて行きたくて、すぐに用意するから待ってて欲しいと伝えると、兄さんは一瞬こちらを見たあと、そのまま黙って玄関に立っていてくれた。
超特急で着替え、いつものお守りをポケットにしまう。
修学旅行先で見つけた、兄さんとのペアリング。
僕の大切な宝物だ。
海沿いを歩きながら、念のため虫が近づいてきてないかを確認していると、兄さんが急に昔の話をしてきた。
珍しい出来事に、僕の胸は急速に高鳴っていく。
あの兄さんが!
僕との昔話を持ち出すなんて!
最近はそんな話もめっきりと減っていた。
今日は最高にいい日だ。
兄さんが連れてきてくれた洞窟で、お互いの服を交換する。
その際、兄さんはポケットから何かを取り出すと、僕に手渡してくれた。
ああ兄さん……!
まさか兄さんが、僕のあげた指輪を持っていてくれたなんて。
嬉しすぎて、もう死んでもいいほどだった。
でも駄目だ。
僕はこれからも、兄さんとずっとずっと一緒にいなければならないのだから。
兄さんに突き落とされた時、僕は叫び出しそうな感情を必死で
まさか兄さんが!
僕を殺したいほど愛してくれていたなんて……!
指輪を交換したのは、そういうことだったんだね!
僕、待ってるよ。
深い深い海の底で、兄さんが迎えにきてくれる日をずっとずっと待ってるから。
そんな日は、案外すぐに訪れた。
可哀想な兄さんは、どうやら記憶をなくしているらしい。
だから、思い出せるように僕が力をかしてあげた。
記憶が戻ったあとも、兄さんは混乱しているようだった。
墓石に彫られた名前は兄さんのもの。
きっとショックで錯乱した兄さんが、自分は朝緋だと言っても信じてもらえなかったのだろう。
ああほんと、可哀想な兄さん。
薬指一本だけしかあげられなかったのは残念だったな。
どうせなら、もう片方の薬指もセットであげたかったのに。
兄さんは何やら泣き喚いていたけど、そんなに僕の見た目が変わってしまったのがショックだったのだろうか。
まあそうだよね。
だって僕たち、双子だし。
でも安心して兄さん。
兄さんも今から、同じ姿になるんだから。
これでまた、お揃いだね。
大好きだよ、兄さん。
誰にも邪魔されない海の底で、これからもずっとずっとずーーーっと、一緒にいようね。
死口仲介任 十三番目 @13ban_me
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