あなたは奏でられていますか、自分だけの音を。

この作品をどう紹介するかは正直迷った。
自分が本作の本質をきちんと読み込めているか自信がなかったのが大きい。
けれど、間違いなく人の心を揺さぶり、問いかける強い力を持った作品だという感想を持ったことは記しておきたかったので、駄文ながらこうしてレビューを書かせてもらうことをお許しいただきたい。

本作は主に「妙」というコントラバス弾きの少女の視点で物語が進んでいく。
読み始めた時、彼女の主人公でありながら第三者から自分を見ているような、距離の遠い視点に少し違和感があった。
その謎は徐々に解き明かされていく。
どれだけ拒絶しても絡め取ってくる強い引力のようなものに引かれて、彼女は自身の抱えるものと向き合わざるを得なくなっていく。

音楽とは、何か。
自分とは、何か。

そんな果てしない問いへ、さまざまな想いを抱えながら飛び込んでいく個性豊かな登場人物たち。

美しい文章で綴られる本作はどっぷりと文芸の世界に浸らせてくれることでしょう。
読み応えのある作品を求めている人にお勧めできる作品です。

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