この作品をどう紹介するかは正直迷った。
自分が本作の本質をきちんと読み込めているか自信がなかったのが大きい。
けれど、間違いなく人の心を揺さぶり、問いかける強い力を持った作品だという感想を持ったことは記しておきたかったので、駄文ながらこうしてレビューを書かせてもらうことをお許しいただきたい。
本作は主に「妙」というコントラバス弾きの少女の視点で物語が進んでいく。
読み始めた時、彼女の主人公でありながら第三者から自分を見ているような、距離の遠い視点に少し違和感があった。
その謎は徐々に解き明かされていく。
どれだけ拒絶しても絡め取ってくる強い引力のようなものに引かれて、彼女は自身の抱えるものと向き合わざるを得なくなっていく。
音楽とは、何か。
自分とは、何か。
そんな果てしない問いへ、さまざまな想いを抱えながら飛び込んでいく個性豊かな登場人物たち。
美しい文章で綴られる本作はどっぷりと文芸の世界に浸らせてくれることでしょう。
読み応えのある作品を求めている人にお勧めできる作品です。
音楽が流れている。ゆったりとした音は、時折激しくなる。
人とはひとりではなく、世界には多くの人がいる。そんな中で人間というものは複雑に絡み、同調したり反発したりしながら生きていく。
そう、さながら多くの楽器を使ってひとつの音楽を作り上げるかのように。
これは、紛れもなく青春の物語だ。
青春とは恋愛だけではない、甘いだけでもない。ほろ苦いと称されるのはきっと、おとなになりきらない彼らが、けれど自分の行動に責任を負うおとなに近付く第一歩なのかもしれない。
謎めく中で、巻き込まれて選ぶ中で、最後彼女らはどのような青春の1ページを胸に刻むのか。
ぜひご一読ください。