第2話:入学式

「開会の辞。」


「これより、令和17年度 私立 聡慧そうけい高等学校の入学式を執り行います。」


…「歓迎の言葉。 生徒会長 七星 眞央。」


「「「「「きゃああぁぁぁぁーーーーーーー!」」」」


「皆さん、静粛に。」


「心地よい春の風が、桜の木を揺らす希望に満ちた季節になりました。


新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。在校生一同、心より歓迎申し上げま


す…」


…「新入生代表挨拶。一年A組 八王子はちおうじ けい



「暖かな春の日差しが降り注ぐ中、私達287名は聡慧高校の一年生として入学式を


迎えることができました。本日はこのような素晴らしい入学式を開いていただきあり


がとうございました…」



「…閉会の辞。」


「以上を持ちまして、令和17年度私立聡慧高等学校の入学式を閉会します。」





新入生や在校生が退場し終わり、後片付けをする係の者が体育館には残っている。


俺は、入学式が終わった体育館で後のことを教師陣と話し合っていた。


学校は生徒会を主軸として運営されている。


「この後は、例年通り進める。外部入学の者達には配慮してやるように。」


「生徒会はどうされますか?」


「基本は教室参加する、特に即急に片づけなければいけないものはないからな。」


「と、なると生徒達が騒ぎますね。先程も、貴方が壇上に上がっただけで入学式にも


かかわらず、叫ぶ生徒が表れる始末。」


「ここは、幼き頃から厳しい教育をされてきた者が多いはずなんだがな。」


「まぁ、生徒会が人気であればあるほど、学校は安定するので、なんともいえません


な。」


そして、話が終わるタイミングを見計らったかのように、声をかけてきた人物がい


た。黒い髪に青い瞳の男は、風紀委員長を務めている。


「…おい、七星。少し話せるか?」


秦弥しんやか。何のようだ?」


「お前なら分かっているだろうに。」


「はぁ、相変わらずだな。場所を移そう、生徒会室でいいか?今は無人だろうし


な。」


「あぁ、それでいい。」



生徒会室は、特別棟4階の角にある部屋だ。内部は隣り合った資料室と繋がってい


る。内装は、PC、デスクや椅子がある業務スペースと、それを区切りソファやそれ


に合わせたテーブルもあり、来賓対応できるスペースに分かれている。


生徒達が一度は訪れてみたいと願う、憧れの地らしい。学校だが。


手短に済ませるために、本題に入る。


「それで、誰を生徒会に勧誘するかを話合いたいということであってるか?」


「あぁ。俺は、風紀委員長だが生徒会副会長でもあるし、何を考えているか分からな


いお前の考えを知る権利はあるだろう。」


「酷く攻撃的だな。まぁ、いいか。


今は、会長の俺と副会長の秦弥、会計のいおり、庶務の千里せんりで構成


している。加えるなら、次代の生徒会を担える人物だ。」


「書記として生徒会を経験させる。お前のことだ、決まっているのだろう?」


「決めるも何も、大抵は新入生代表挨拶を務めた者だろう。」


「八王子か…容姿も、成績も問題はない。が、家がな…やけに言い方が遠回しだな?


それにお前なら慣習などに縛られることなく、一存で決められるだろう。」


「さあな。」


「眞央!天沢が言っていた、お前が新入生の名簿を確認していた時、驚いた顔をして


いたと。私情では滅多に表情を変えることがないお前が、だ。」


「知らん。お前は俺を過大評価しすぎだ。」


そう言った後、話は終わったと言わんばかりに俺は席を立って、生徒会室を出てい


く。取り残された部屋には一人、一ノいちのせ 秦弥が残っている。


悩むような表情をし、酷く悲しそうに見える。


「…眞央、お前がその気になれば、ほとんどの人間に心情をつゆほども気取らせな


い。俺も例外でなく。天沢がわかったという事は、あえてだろう。


お前は何を俺達に求めている?」


答えを求めているのに、返ってくる返事は無く、それは迷う仔羊の懺悔のよう。


「眞央、お前は、何を見ているんだ?」


こぼれた呟きを拾う者はおらず、部屋へと溶けて消えていった_




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