第10話:保健室
コンコン_保健室のドアをノックする。
「「「「失礼します。」」」」
入っていくと、鎮まりかえり、誰もいないようだったが、ベッドに筒香先生が寝てい
た。思わず、見ていたら、急に目が開き、視線が合う。
「チッ。保健室に何の用…だ、と思ったら泥まみれじゃねぇか。」
機嫌が悪そうに話していたが、朝日向さんを見て目を丸くする。
「すみません、私…でも、筒香先生は如何してここに?」
「あ?養護教諭が出張でいねぇから、サボる場所として使ってたんだよ。」
そう言った先生を4人で呆れたように見てしまっていた。
「あ、えっと女子用の着替えとかって保健室にあるんですか?」
僕がそう聞くと、呆れた視線がかえってきた。
「俺が、知ってると思うのか?」
まさかの返答に、思考を沈ませる。
「如何すんだよ?」
そう聞いたのは、榊で全員が困ってしまった。
「あ、えっと私、このまま帰ります!!ご迷惑をおかけしました…」
そう言って朝日向さんが走っていく。全員が、
「「「「ちょ、待て(待って)!…」」」」
と急いで呼び止めたが。
_ドンと転けたような音が聞こえてくる。
「きゃっ!!あ、すみません。泥が!!」
_そして、悲痛そうな声が聞こえきた。
秦弥が風紀委員長として根暗に状況を聞く。
「監視カメラで学園内を見ていたところ、園芸部の近くで、女子生徒達が問題を起こ
したらしく、被害者が養護教諭のいない保健室へ歩いていったことを報告に来まし
た。」
「風紀委員を何名派遣した?それと加害者は?」
俺が話に割って入り、聞くべきことを聞く。
「えっと、風紀はまだ派遣していません。それと、加害者は監視カメラの位置を知っ
ていると見え、その…」
「あーあ、写らないようにしてたんだね。頭いいねー。」
庵が感心したように呟いた後、秦弥が眉間に皺を寄せる。
「はぁ、根暗。まず、お前は謹慎処分だ。あとで追って沙汰を通達する。」
「えっ!?委員長なぜ!?私は職務を全うして…」
「どの口でそれを…ちっ、おい、七星、付き合え。」
秦弥が見るからにイライラする。
「えぇ?まーちゃんが行くなら僕も行くよぉ!!」
そういう感じで次の行き先が保健室へと決定した。
楽しげな音が響いていたが、保健室が近づくにつれて遠ざかっていく。
「ねー、秦ちゃん。何で、ねっくんを謹慎処分したの?」
「言葉通りだ。」
「だ、か、ら、わからないんだってば。」
庵は頭にはてなを浮かべていたが、秦弥に答えてもらえず、
頬を膨らまし、腕を引っ張る。
「庵、説明してやるから。秦弥を少し放っといてやれ。」
「!まーちゃんはわかるの!?」
キラキラとした表情に変わるのを見て、コロコロ変わるな、と思う。
「まず、根暗は3つほど、おかしな行動をしている。それが何かわかるか?」
「えっと、1つは風紀を派遣しなかったことだよね。問題が起きたら、風紀が動く。
これが、当たり前だもん。」
「そうだ。そして、監視カメラに写っていたと言っていた。」
「あ!そっか、何で女の子達ってわかったんだろう。犯人は、写ってないのに。」
「あの言い方では、写っていたのが、被害者女子だけだっただろう。」
「3つ目は、俺達に直接報告に来たことだ。」
「秦ちゃん?落ち着いたの?」
秦弥が悔しそうに、言う。
「あぁ、悪い。風紀からあんなのが出たのは俺の責任だ。続けると、
風紀、特に見回りのものはインカムを着用している。監視カメラに写っていないと言
うことは、現場を見た委員が根暗に報告したと言うことだ。そして俺の指示を仰ぐこ
とで時間稼ぎしたのだろう。もう、犯人は追えまい。」
「それって、ねっくんが…」
「庵、今、考えているのが秦弥が怒った理由だ。」
保健室に着き、ドアを開けようとすると、目の前で扉が勢いよく開き、
人がぶつかってくる。相手が後ろに倒れそうになるので、背中へ手を回し受け止め
る。
「きゃっ!!あ、すみません。泥が!!」
そう言って顔を上げた生徒を見て驚いた。ヒロインがなぜここに?
すると、ゾロゾロと4人がこちらへ来る。驚いた顔を一様に浮かべる。
「「「「「生徒会長!?/眞央先輩!?」」」」」
「まーちゃんだけじゃないよ!」
「風紀委員だ、詳しく事情を聞きたい。」
「圭、頼んだ。俺、会話無理。」
陽キャな榊が、俺達との会話を拒む。
「あ、えっと…」
全員が困惑しているのがわかったため、とりあえず、保健室の中に入って鍵を閉め
る。そしてヒロインをお姫様抱っこで連れて行き、ソファに座らせる。
「きゃっ、えっとあわあぅ。」
言葉にならないものを紡ぎ、顔を赤くして照れる。
「怪我はないか?」
「あぅ、えっと大丈夫でふ。」
「そうか。」
秦弥が色々聞くだろうから、様子を見ることにした。
「筒香先生は如何してここに?」
秦弥が問いかける。
「あぁ、養護教諭が出張って聞いていたから、留守番をしていた。」
向かいのソファに座った、筒香が本当の事を言っていないと会話に入る。
「Doubt. 本当のことを言っていない。」
俺がそう指摘すると、全員が一斉に俺を見る。
「…ちっ、何でわかるんだよ。サボりだサボり。寝てたんだよ。」
「まーちゃんすごーい!!」
庵がキラキラとした目で見てくる。他の一年もそのような目をしている。
「ほう、風紀の前で教職がサボりを自供とはいい度胸をしている。」
「だから、言いたくなかったんだよ。」
「筒香先生の件は一旦置いといて、そこの女子生徒と事情を知るものは、風紀委員室
へ来てもらおう。」
全員で風紀委員室へ向かう。
「ちっ、おい、俺は知らないんだが。」
面倒くさそうに、頭を掻きながら言うのを見て、教職について疑問に思う。
「筒香先生には別件でついてきてもらっている。」
「はぁ。」
優等生な秦弥と筒香を比較すると不良だな。
風紀委員室は特別棟3階の角に位置する。秦弥がカードキーを通し、パスワードを打
ち込むと開く。
_ピピッ。
「おや、特別棟がオートロックなのは周知の事実ですが、このようにするんです
ね。」
感心して呟くのは、高杉 湊だった。
「湊は兄貴から聞いてなかったのかよ?」
「聞いていないだろうな。あまり知られないように気をつけているし、知っていても
基本話さないように秘密にしてもらっているからな。まぁ、入れ。」
秦弥の言葉を聞くまでもなく、普通に入っていく。
「生徒会室も驚いたけど、風紀室も似たような作りなんですね。」
「圭ちゃん、驚いた?でも、風紀室のが質素なんだよ。」
「おい、湊、聞いたか。これで質素なのかよ。」
「そうですね、驚きました。」メガネがずるっとしている。
「当たり前だろう、風紀には生徒会のように華やかである必要はないからな。
それより本題に入りたい。それで?」
秦弥が朝日向に事情を説明するよう目を向けるが。
「あうえっとその。」
ずっと黙っていた当人は、緊張していたらしい。
こんなモブは存在しない!! カヲル @kaworu4649
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