第9話:新入生歓迎会
「…い。おい、圭?如何したんだよ?」
「あ、ごめんね。昨日のことを思い出していたんだ。色々と、濃かったなって。」
「そうか、急に黙り込むからびっくりしたぜ。」
「それで、僕も新入生だからって眞央先輩が免除してくれたんだ。」
「では、一緒に回れますね。」
全校生徒が集まると、広すぎる体育館でさえそれを感じさせない圧迫感がある。
クラス点呼が終わり、生徒会長つまり俺が壇上へと上がる。
「「「「「きゃぁぁぁぁぁ」」」」」
女子と男子の甲高い叫びが会場へと響き渡る。
俺が人差し指を立て口元にやると一瞬で鎮まる。
「これより、新入生歓迎会を始める。」
すると、急に暗転し、数秒後、音楽と同時に点灯する。
壇上は、生徒会と他数人がダンスを始める。最近のk-popや洋楽など、迫力がある音
楽、キレキレの動きに、息の揃った動きが会場を沸き立たせる。
ミスもなく、機材トラブルも起きなかったな。
そう思いながら、ダンス部部長にマイクが渡るのを見る。
「初めまして、ダンス部です。今回、生徒会とコラボさせていただきました。
興味が湧いた人はぜひ、入部をお願いします。」
無難な挨拶をし、庵と秦弥で新歓の説明をする。
「みんなー!見てくれて、ありがとう。生徒会会計の天沢 庵だよぉ。
これから秦ちゃんから説明があるよぉ。」
「生徒会副会長の一ノ瀬だ。配布されたプリントを確認すると、そこに何処で何の部
活が紹介をしているかが載っている。興味を持ったものには積極的になってほしい。
そして、風紀委員長としては、問題を起さないように。では、解散。」
生徒達が散っていくのが目に入る。
「まーちゃんっ、一緒に回ろう!!」
庵に急に抱きつかれる。それを注意した秦弥と言い合いになる。
「おいっ、天沢、見回りは遊びじゃないんだぞ。それに俺達は本部担当だろう。」
「もうー、秦ちゃんはかたすぎるんだよぉ!頭でっかち!!」
そこに、話しかけるものが。確か風紀副の根暗だ。悪口ではなく苗字だ。
「あのっ。」
「天沢、俺の頭は大きくも固くもない。普通だ。」
「そういうこと言ってるんじゃないもんっ。」
「あ!!あの!!」
「何?あ、ねっくんだぁ。」
「根暗か、何か問題があったのか。」
「そうなんです。実は…」
周りを見ると動き出す人がやや見え始めた。僕は、湊と榊と合流する。
「圭、湊。すごかったな。ダンスがやべぇ。」
「榊、語彙力がなくなってますよ。何処から周りますか?」
「うーん、部活動が多いな。如何しようか?」
「俺は、バスケ部に入る予定だから、何処でも構わないぞ。」
「では、ありきたりな部ではなくマイナーな部に行きますか?」
「ありきたりじゃなさそうで、近くには、園芸部と乗馬部があるね。」
「じゃあ、それにしようぜ。」
全員で校舎の影になっている、近道を通っていく。
「暗いですね。こちらが近道であっているんですか。」
「多分、あってると思うぜ。通っていく奴らも見かけたし。」
「え?それって本当に園芸部の人たちか…い?」
言葉が自然と止まる。言い争っているような声が聞こえてきた。
「…あ…た…いきなのよ!!ちょ…の…ないわよ!!」
「これは、平和な感じではないですね。」
「見に行こうか。」
走るように自然と体が動いていく。校舎裏の目的の場所へと近づくとだんだんと会話
が鮮明に聞こえ出す。
「ちょっと可愛いからってなめすぎなのよ!!かわいこぶってんじゃないわよ。」
「私は、可愛こぶってなんていません。やっ!!」
そこには、朝日向さんが泥をかけられていた。
その姿が何故か母に被って見えてしまった。
「そこで、何をやっているのかな?」
声をかけると、髪を金髪に染め、ピアスをし、厚い化粧をした女が焦ってこちらを見
た。
「誰よ!!あんたには、関係ないわよ!!私は、人の彼氏を奪ったこのアバズレ女に
罰を下してるだけなの。どっか行きなさいよ!!!」
「…ど。」
口を開き、言葉を紡いだ瞬間、榊の声が聞こえた。
「圭っ、おま、お前おいて行くなよ!」
「そうですよ…はぁはぁ。つ、疲れた。」
「いや、ごめんね。」
2人が着いて謝っていると、女はこの場を後にして、逃げてしまっていた。
急いで駆け寄って声をかける。
「朝日向さんだよね、大丈夫?」
「えっと、ありがとうございます。でも、汚れてしまいますよ?」
泥だらけでしゃがんだ彼女に手を差し出す。
「構わないよ。」
僕は座り込んでいた朝日向さんに手を差し出した。
「せっかくの歓迎会なのに災難だったな。保健室でいいのか?」
「この場合はそうですね。」
そうして4人で保健室へ向かった。
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