第7話:生徒会顔合わせ
入学式から数日が経った。
半日の授業が終わり、午後からは新入生歓迎会が開かれる。
周りを見ると浮き足だった生徒達が目に入る。
「なぁ、楽しみだな。そういえば、圭。生徒会主催らしいが、お前はいいのか?」
そう問いかけられ、昨日のことを思い出す。
教室で授業後、帰る準備をしていると、廊下が騒がしくなった。
「ねぇねぇ、僕、生徒会会計の天沢ってゆうんだけどぉ、八王子くんを呼んでもらっ
てもいいかなぁ?」
そんな甘えているような声が教室に響き、静かな教室は絶叫に変わる。
聞こえた声に反応するように立ち上がり、声をかける。
ミルクティーのような髪に黄色の瞳を持ち、可愛らしい顔をし、背まで
小さいので先輩と聞いていなければ、年下だと思うことだろう。高校三年生にはとて
も見えない。
「僕が八王子ですが、何か御用ですか?」
「わぁぁ、イケメンだね。えっとね、まーちゃんにね。呼んできてって言われたから
きたの。顔合わせをするんだってぇ。秦ちゃんはちょっと恐いから。」
「まーちゃん?秦ちゃん?え???」
「ついてきてくれるよね?」うるうると頼まれる。
「えっはい。」急いで笑顔を取り繕う。
「わーい、やったぁ。」
ついて行くと、特別棟4階の角部屋に案内された。扉には威圧感があるが、
天沢先輩は躊躇なく開ける。
「どうぞぉ。入って入って。まーちゃん、連れてきたよぉ。褒めて。」
「ありがとな、庵。秦弥には、向いてないからな。」
そんな軽口を聞きながら、入った生徒会室は、カーテンが
に揺られ、豪華な一室が、別世界に迷い込んだのか、と思わせる程だった。
「ようこそ、生徒会へ。君を歓迎する。」
簡潔に言った生徒会長は、誰をも魅了する端正な顔に美しい笑みを浮かべていた。
言葉を失い、返事ができない。
「わぁ、まーちゃんかっこいい。秦ちゃん、こういう笑顔だよ。」
「秦ちゃんはやめてくれと、いつも言っているだろう。八王子、突っ立っていないで
そこのソファへ座るといい。」
「あ、はい。わかりました。」
言われた通りに腰をかける。
「秦ちゃん、おやつ出していい?」
「構わないが、食べすぎるなよ。それと、七星もソファへ来い。話にくいだろ。」
「分かった。八王子、何が飲みたい?茶系、コーヒー色々とある。」
「えっとでは、紅茶のストレートを。茶葉はおまかせで。」
「わぁ、王子様だね。容姿も茶髪に緑の瞳でイケメンだし、生徒会が王族みたいだ
ね。まーちゃんが王様で、僕が末っ子で、秦ちゃんは隣国の王様、王太子?」
「何で、お前が末っ子になるんだ…はぁ。」
突っ込むところはそこなんだ、と思っていたが妙に納得もしてしまった。
会長が紅茶をいれて、席へつく。ダラダラしていた天沢先輩が姿勢を正す。
「本題へ入ろうか。まずは自己紹介から、俺は生徒会長をしている、七星 眞央
だ。好きに呼んで構わない。そして一つ、生徒会書記になることに拒否権はない。」
そう会長が話した瞬間、秦ちゃんと呼ばれた先輩が呆れた視線を向けたがすぐにこち
らを向き、
「俺は、副会長兼風紀委員長をしている、一ノ瀬 秦弥だ。呼び方だが、ちゃんづけ
はやめてほしい。常識を持っているなら呼ばないだろうが。」
「え、ひどーい。常識はあるもん。可愛いものが好きなだけだもん。ね?
僕は、天沢 庵だよ。なんて呼んでくれてもいいよ。一押しはいおりんとか?」
「自己紹介ありがとうございます。僕は、八王子 圭です。よろしくお願いしま
す。」
「じゃぁ、圭ちゃんだね。生徒会のことはどこまで知ってるの?」
僕は湊から聞いた話を話すと、
「え?詳しいね〜、特に説明もいらないよ。すごいね。」
「生徒会について、話さなくていいのなら、仕事について説明するか。それでいいの
か、七星?」
「そうだな。書記がやることは、会議の板書と議事録の作成と意見を出すことと、
そして次代の生徒会を担うために、経験を積むことだ。わからないところは?」
「次代の生徒会ですか?」
「あぁ、俺が次の生徒会長を指名することになる。だが、あってないようなものだ。
大抵は書記を務めていたものが生徒会長になるからな。例外は殆どない。」
「確かに例外は殆どない…殆どだが。」
「そんな深刻にならなくても、なるようになるよ、圭ちゃん。」
「話が変わって悪いが、新入生歓迎会については、如何する?生徒会主催だろう。」
「圭は、新入生だから、関わらせる気はない。連絡先を交換したら、今日は帰っても
らって構わない。」
「えっと、お気遣いありがとうございます。会長。」
「圭ちゃん、固いよう。まーちゃんはまーちゃんって呼んでも怒らないよ?」
「じゃぁ、七星先輩でよろしいですか?」
「まーちゃん!!」
「眞央先輩でお願いします。」
「庵、その辺で勘弁してやれ。」
「そうだぞ、天沢、今の時代パワハラにあたるぞ。」
「秦ちゃんも固いよう。ムゥ。」
生徒会の顔合わせは、そんな感じに終わっていった_
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