第6話:会合
身支度をする。制服を脱ぎ、和服へと変える。準礼装のグレーのお召に墨色の一つ紋
の羽織を合わせる。そこまで仰々しくないため、袴は身につけない。
「失礼します。眞央様、そろそろお時間でございます。」
「分かった、そろそろ行く。」
_広い和室の一室に七星に下った13の家々が集まる。
「今日はせわしない中、集まってくれて感謝する。(今日は忙しい中、集まってく
れてありがとう。)そやさかい、ゆっくりしてええなはれ。(だから、ゆっ
くりして行ってくれ。)」
七星家現当主である、七星 真史が話している。白い髪に青紫の瞳を持ち、綺麗な顔
は今、笑顔がつくられている。会合といってはいるが、顔を合わせることや近情を話
すことが目的だ。次代が決まっていない場合は誰を次代にと話合う場なのだが、
決まっている今特にそういうこともない。
七星の行く末が13家の行く末にもなる。
「眞央様、高校へのご入学おめとうございます。」
「久しぶりだな。そら、おおきに。
あんさんのところも、女の子生まれたて聞いた、おめでとさんやな。」
「えらい、耳早いことで。いつか、役に立てとぉくれやす。」
「待っとる。ぜひ、楽しんでいってくれたら嬉しいわ。」
社交辞令のような会話をしながら、情報を得ていく。
ちゃんとお前達のことを気にかけているとアピールすることも大事だ。
京都を大事にしている者が多いので京都弁で話す方が喜ばれる。
会合を途中で抜けて、自室へと戻る。軽い和服へと着替え直し、執務室に入る。
「失礼します、眞央様、お飲み物はいかがなさいますか?」
「コーヒーにしてくれるか。」
「かしこまりました。」
22時から23時の1時間ほどで執務を終わらす。温かいコーヒーを注いでもらった
が、飲む頃には冷めてしまっていた。春休みを中心に、5ヶ月分の執務を終わらし
たため、近く、学校生活に支障はきたさないだろう。
風呂へ入ってもう一度身支度をする。
明日も学校であるから、東京に戻らなければならない。車の中で寝るしかないよう
だ。考え事をしながら外へ出る。少し気温が下がり、ひんやりとする。会合は終わっ
ているようで、騒がしい音が嘘だったかのように静かだ。
父親が庭に出ていたようで、目があった。相変わらず、人を人として見ていないよう
な目だ。七星のために生きている父親は、端正な容姿が人形らしさを際立たせてい
る。普段、あの表情を変化させることはない。よく父親似だと言われるがあまり、嬉
しくはないな。視線を逸らし、車へと乗り込む。
使用人には伝えていないので見送りはない。
車は静かに発進する。
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