第5話:学校の仕組み

初日のやることを終えた教室にはもう、ほとんど人が残っていない。


入口付近の人がいなくなるのを待っていたが、大分、遅くなってしまった。


「なぁなぁ、八王子、一緒に帰らね?」


そんな中、榊が机の間を縫ってこちらに来る。


「構わないよ。でも、湊も一緒なんだけどいい?」


「おう。それより、気になってたんだが、八王子と高杉ってどういう関係なんだ?」


「幼馴染ですよ。それより、呼びにくくないですか?」


「確かに、そうだよね。僕のことは圭でいいよ。」


「おう、助かるぜ。正直、なげぇって思ってたんだ。」


「僕のことも、湊で構いません。僕は、榊って呼びますが。」


「榊は榊のが言いやすいからね。僕もそうしよ。」


「事実なんだが…なんでだ?心に隙間を感じる。」


教室を出て、下駄箱で靴を履き、外へ出る。どうやら、全員同じ方向らしい。


呼び名について話をしていて、ふと疑問に思ったことを聞いてみる。


「そういえば、湊。生徒会について何か知らないかい?」


「知ってますよ。詳細として、現生徒会は、生徒会長 七星 眞央、


風紀委員長兼副会長 一ノ瀬 秦弥、会計 天沢あまさわ 庵、


庶務 西園寺さいおんじ 千里せんりで構成されています。


会長、副会長、会計が3年生で、庶務が2年生です。


そして、新入生代表挨拶を務めたものが代々、書記として任命されています。」


「何で、そんなに詳しいんだよ?お前らも外部だろ?」


「兄が前までこの学校に通っていて、散々聞かされましたから。」


「なるほどな。それにしても、風紀委員長兼副会長って何だ?」


「生徒会に所属すれば、それは委員会としても認められます。風紀委員会は学校の風


紀を守るべく、生徒手帳に載っている規則を守っていない生徒を罰します。昔は別々


の組織として存在していたようですが、今は2つの役職を合わせているんです。


生徒会は、教師と対等もしくはそれ以上の権力を持ちます。教師の怠慢を抑止するた


めにつくられているんです。そして、風紀委員会は生徒会にとっての抑止力です。生


徒会も生徒の括りに入りますから。ですが年々、家柄など様々な理由で対立が起き、


学校の秩序が乱れこの仕組みを維持できなくなった結果一つになったようですね。」


「そうなんだね。でも、それって風紀委員長と生徒会長が徒党を組んだらまずいんじ


ゃないかい?」


「えぇ。なので、風紀委員長の任命権は教師側にあり、生徒会副会長の任命権は生徒


会長にあるんです。」


「俺の頭は理解することを拒んだな。」


「つまり、両者が合意した人間じゃないと選ばれないんだね。」


「はい。中立の立場ですね。」


「生徒会長って、あのすげぇ風格があるイケメンだよな?寝そうになってたのに、


あの叫び声で目が覚めたぜ。」


「そうですね。歴代最高と名高いです。」


「去年も会長だったのかい?」


「正確には1年生の11月かららしいです。本来と違い少々微妙な月からですが。


今期の生徒会は長い、と思われます。それほど会長の人気が高い。」


「なるほどね。」


「どう言うことだ?お前らの頭が常だと思わないで欲しいんだが。」


「あなたは僕の成績を知っているんですか?」


「知らないけどな、湊は見た目が頭良さそうなんだよ。メガネかけてるし。」


「確かに、言われてみるとそうだね。知的って言葉がよく似合う。」


「なるほど。褒められたと認識しておきましょう。


それで、続きですが、本来は、1月に生徒会長が生徒会役員を指名して運営されてい


きます。4月に、次代の生徒会長を書記として任命し、10月から引き継ぎ世代交代


をするらしいです。


そして何故、現生徒会長が歴代最高と言われているかというと、


一番目立った理由が2ヶ月間生徒会を一人で運営したことにあるそうです。


これは、言葉以上にすごいらしく、現生徒会長は、一年時に生徒会に入っていなかっ


た、11月の生徒会長選挙で、教師陣や生徒達に指名され、満場一致で生徒会長にな


りそこから1月までの間の話らしいです。


この学校の方針にも関わってくるのですが、基本運営は生徒会に任されている


んです。だからこそ、生徒会は教師と同じような権力を持つことを許されている。」


「何で、一人で運営することになったんだよ?」


「前生徒会が問題を起こし、退学処分になったかららしいです。」


「5人とも退学処分とは、重い罰だね。詳細は?」


「一切、明かされていません。そして、退学処分になったのが11月です。


大した引き継ぎがされず、12月には理事会への報告会があります。」


「理事会ってのはお偉いさんどもだよな。それは、すげぇな。」


「やってることが尋常じゃないね。でも、一つ疑問がわく。指名という言い方という


ことは立候補はしていなかったんだろう。


何で生徒達や教師陣の白羽の矢が、現生徒会長に立ったんだい?」


「教師陣は、新入生代表挨拶を務めていたから、らしいです。」


「じゃあ、生徒会長は書記だったのか?」


「いえ、書記ではなかったそうです。すみません、その辺りは詳しく知らないんで


す。」


「いや、ありがとう。すごく助かったよ。」


「いえ、構いません。」


「なぁ、頭使ってお腹すいたし、飯食い行かないか?」


「賛成だね。」


_そう言って帰途についていった。


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