第3話:幼少期

秦弥との話を終わらせた後、俺は帰りの車の中にいた。


俺の家である七星は京都に本家を持っているため、会合のために長い下校を強いられ


ていた。そんな中、幼少期について思い出す。




_ある日、突然とこの世界へと生を受けた。生まれた瞬間、俺は、困惑した。


これが、二度目だという感覚があったからだ。


そして、転生したことを悟った。


父親に言われるがまま、教育を終わらせていく。


前の生の事は生憎と覚えていなかったのだが、何故か物事をどうやっていくのかは把


握していた。初めての経験はないことから考えると、前世も財閥関係者だったのかも


しれない。そんな日々を過ごし、数年が経つと、前触れもなく俺は母親から引き離さ


れた。普段からそんなに長くは話せないが一切の接触禁止は初めてだった。


生まれ落ちてから、「七星」と言う名に違和感を覚えていた。


七星は名家だ。そして、日本有数の財閥でもあった。


2歳になると、母親との面会が1度だけ許された。


理由は知らされないままだったのだが、その答えはようやく会えた


母が語った。弟が出来たからだった。その後、すぐに母親と父親が離婚した。


父は元々俺が生まれたら離婚する予定だったのだが、『子供には、母親が必要』とい


う理由により縁者達が止めていたらしい。


父親とは、殆ど会話した覚えはないが、唯一つの命令は印象的だった。


「自由になりたければ、後継者教育を終わらせろ。」


だから、3歳から12歳まで、京都やヨーロッパ、アメリカを往復するように


なった。そして聡慧学園の中等部に通うことになった。


自由になるために早々に後継者教育を終わらせたが、その後、次期当主として動くよ


うになったので、あまり意味はなかったし、あの言葉は詐欺だった。


長々と思い出していたが、一番衝撃を受けたのは、ここが前世の中にあったゲームの


世界であるということだろう。


所謂いわゆる「乙女ゲー」と呼ばれるものだった。


CMが大々的に流れていたこと、タイトルが『七人の星から来た王子様』というあま


りにどうかと思うものということ、そして『七星』はその略称であり、俺が思い出せ


た理由だ。


ヒロインは、「朝日向 美桜」攻略対象者は、「八王子 圭」「高杉 湊」


「榊 陽翔」「筒香 流架」「一ノ瀬 秦弥」「天沢 庵」「西園寺 千里」の7人で


構成されていた。この学校の顔面偏差値が高いのは、それが理由かもしれない。


俺は、存在していたのかもしれないが目立つキャラでは無かったはずだ。


シナリオは比較的、王道に近かったと思われる。ヒロインが不幸な目に遭い、


それを攻略対象者が助け、それぞれ、親密になると同時に攻略対象をヒロインが救


う。最後は、7人のうちの一人を選びハッピーエンド。


思い出して、早々に見なかったふりをして関わらないと決めた。


それなのに何故か、生徒会長になった。


生徒会長は本来、一ノ瀬が務めているはずだったのだ。西園寺が副会長で、天沢は会


計だった。


そして今日の入学式の様子を見ると、とうとう乙女ゲームが始動する。


「八王子 圭か…」


メインヒーローであり、名家の出であり、非の打ち所がない、爽やか系王子と前世で


称されていた、乙女ゲーの時との印象の落差はないと感じられた。


だからこそ今日は、得られるものが多い一日だったと感じた。


放っておけば、勝手に終わるだろう。高校生活も後1年…




車が停車し、ドアが開けられる。東京では、気持ちがよかった気候が京都では、少々


暑く感じられたが、6時間の道のりで景色はすっかり暗くなっている。


「「「「「おかえりなさいませ」」」」」


使用人に向かい入れられ、和式と呼ばれるような家へ入っていく。


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