舞台に潜むのも恐ろしいのも、魔物だけじゃない。神だって──

 本作はとある新作舞台の制作発表から初日に至るまでを描いたホラー風味のミステリです。
 登場人物は役者に限らず、舞台監督に演出助手、照明など裏方にまで多岐に渡り、キャスト・スタッフ集めの過程や稽古風景の端々にまで説得力とリアリティがあるのが第一の魅力でしょう。舞台好きなら「(箱の大きさ・題材・出演者の有名度etc.的に)こんな舞台ありそう~~~!」となること請け合いです。私はなりました。

 第二の魅力は、畳みかけるように起きる事件とトラブルの連続による息もつかせぬ展開です。
 制作会社のコネで押し込まれた無能スタッフ、反目する主役級女優たち、揃わないキャスト、進まない稽古、迫る初日──そして頻発する怪奇現象。
 そう、ただでさえ読んでいてドキドキするピンチの連続なのに、常識では考えられない現象にも多々見舞われるのがこの「舞台」、その怪異の正体とは、この舞台が狙われる理由とは──と(捗らない稽古に頭を抱えながら)迫っていくのが「筋書き」となっています。

 初日というタイムリミット、興行的にもチケット発売済で後に退けない逃げられない中で、登場人物たちが悪戦苦闘する様を手に汗握りながら見守る、ジェットコースターで振り回されるようなスピード感のあるエンタメです。果たして初日の幕は無事に上がるのか否か、ぜひ読んで確かめてみてください!

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