モラトリアムとしての優しい時間

登場人物たちは、それぞれに負い目を抱えている。
と、同時にだれかに償わせるべき傷を負ってもいる。

すべてを保留にして、ただ三人で暮らすことを楽しむ。

もちろん、その暮らしはどこか不安定で、危なっかしい。

いつか互いの負債を支払わねばならないと予感しながら、まろやかな会話を楽しむ。

終盤、危なっかしい均衡は、予想通り壊れてしまうのだけれど……

始めてしまったモラトリアムの落とし前、どう決着をつけたかは読者のみなさまひとりひとりが確かめて欲しい。