やわらかで不思議な世界に浸れつつ、確かな手触りとSF的結末も心地よい

コンニャク爆弾製造の罪を問われ、理不尽な聴取の結果確定死刑囚となり、四次元の監獄で図書館を探して彷徨う話。めちゃくちゃおもしろかった。

語り口は寓話的で、どこかコミカルさも漂いテンポよく展開して読みやすい。「コンニャク爆弾」の語に明らかなように、どこか超現実的で、迷路か星新一の世界みたいな景色も素敵。

寓話的、と書いたが、絵本のようでありながらこの世界は決して作り話ではなく、現実社会の射影というか風刺というか、確かな実在感があるのもすごい。著者の解像度の高さを感じる。

小道具も楽しいが、かわいらしげな世界観の魅力で押し通すわけでもなく、どんでん返しと伏線回収が見事なのにも舌を巻くというか、気持ちよかった。これぞショート・ショートの切れ味。一気に最後まで読んじゃった。

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