第三章【六】天女降臨 天宮静女
黒猫の神使[セリエ]が消えたあとだった。
康代、信美、利恵の三人の前に刀剣がゆっくりと上から降りて来た。
『天井からなの?』
康代は驚く。
伝説の【
「ええー」
「うそー」
刀剣は金色の光に包まれ透明になって消えた。
徳田大統領、織畑、前畑は目をこすって幻影なのかと顔を見合わせていた時だった。
刀剣が消えた場所に天女姿の美しい紫色のロングヘアの女性が現れた。
瞳も紫色で、この世の者とは思えない。皆は、妖(あやかし)かと思い用心した。
『ええこれ、聞いていないわよ』
「我は天叢雲(あめのむらくも)の化身でござる」
「我は皆を助けるために天界の女神【アメリア】の命を
ーー神使の[メリエ]様から受けやって来たのでござる」
天女の説明が続いた。
「お役に立つ時がござるやも知れないでござる。
その時は我が皆の力になれるでござる」
天女は、再び、光輪に包まれると、神聖女学園の女子高生の制服姿に変身して現れた。
さすがに、あまりのチートぶりに声を失う三人に女子高生姿の天女が挨拶を続けた。
「本日から、生徒会に参加させて頂く【天宮静女】でござる」
「
徳田大統領の側近にチート級の伝説の天女が加わった。
高天原(たかまがはら)の伝説みたいなことが、神聖女学園の生徒会室で起きたのである。
時代が音も無く動き始めた。
徳田は、復活した徳田御三家に招集を掛け国政に参加させ監視させることを心の中で決める。
二度と不埒な輩が現れないように・・・・・・。
神聖女学園の生徒会室は新政府の執務室になった。
永畑町の官邸時代は徳田時代から三百年目に完全に幕を閉じた。
徳田康代大統領は、生徒会の執務室で世直し本部を立ち上げ女子高生に協力を求める。
神聖女学園の中でも、外でも、女子高生の協力の声が上がる。
女子高生パワーは全国規模で拡大して、全国の藩に女子高生支部が結成される。
『未来の皇国のために、みなさんの協力があれば、嬉しい限りですわ』
徳田は協力者にネットライブで答えた。
数学の天才の前畑利恵副大統領は、デノミと通貨リセット後の銀行を国営化した。
通貨支配脱却を実行したのだ。
すべての無駄は削除され国家と国民のために使われた。
全国の役所は箱物見直し政策で国民の住居と国営スーパーと避難所に作り変えられた。
全国の戸籍データーベースが学園の地下司令部に移転した。
織畑信美首相は、国防を担当して、宇宙発電所を見直し、宇宙からの危機管理を強化した。
天女の天宮静女は、徳田大統領の側近として身辺を護っている。
【聖女の康代を天女が護るなんてあるんだ!】
静女は説明した。
「伝説は長い時の流れの中でいつの時代も間違って口伝されているでござる」
「そして歴史は書き変えられているでござる」
「刀剣の姿は身を隠す魔法の様なもので、
天女の姿が本物でござる」
皆を安心させる静女だった。
「まるで魔法みたい」
利恵が言って笑った。
神聖女学園に集結した女子高生は徳田幕府の重鎮になって康代を支える。
学園の敷地内にある大型ショッピングセンターに地下通路から移動することが出来た。
まるで、新政府誕生のために準備されたような地下通路だった。
ショッピングセンターのカフェからは神聖女学園が見渡せる。
鎖国している皇国に外交は存在しなかい。国防は神々の結界に守られているのだが・・・・・・。
天女の
小さな空中浮遊自動車は遠くからは見えない。
『静女様、何かありそうですか』
「徳田殿、心配ないでござる」
さすがに、天女と大統領の会話に友達言葉は聞こえない。
『そうなら、良いのですが・・・・・・』
「徳田殿は、心配性でござるか」
『いえ、そんなことはありませんわ』
「ここからの見晴らしが良いので見惚れてござるのよ」
『静女様、学園都市が一望出来ますからね』
「静女で良いでござる。徳田殿の側近なのでござる」
『じゃあ、静女、何がいいかしら』
「拙者は、久しぶりの現世なので、
クレープと言う食べ物を試してみたいが良いでござるか、徳田殿」
『クレープね、わかったけど、康代でいいわよ』
信美と利恵も苦笑いを浮かべていた。
「拙者、なんか、変なことを言ったでござるか」
「なんか時代劇みたいだよね、拙者なんて」
「そうか、そうか三百年ぶりの現世じゃからのう」
静女は微笑んだ。
静女は再び光に包まれると昔の姿に変身して見せた。
『どうじゃ、昔の姿じゃ』
『静女は、すぐ変身出来て便利ね』
信美と利恵も何度も頷いていた。
静女は三人以外には見えていない。
『静女には女性更衣室いらないわね』
「康代、なんじゃそれは」
「静女さん、体操着に着替える時のお部屋よ」
「そうか、信美、便利でござるのう」
「静女様の方が便利ですわ」
利恵も加わってはしゃいでいた。
遠くに見える都心の超高層ビルが紫色の霧に包まれて航空障害灯のランプが赤く点滅していた。
神聖女学園にまで都心の地鳴りは聞こえなかった。
康代たちは、生徒会執務室に戻った。神使の黒猫[セリエ]の言葉を思い出していた。
「都心部と永畑周辺があぶない・・・・・・と言う言葉・・・・・・」
【時の女神エルミオ】の神使[ルニャ](赤猫)の協力を。
康代の無意識が赤猫の神使を思い出していた。
『時間稼ぎが必要な場合・・・・・・』
徳田康代大統領は、前畑副大統領に国民住宅と避難所の状況を確認した。
「各藩の協力を受けて、予定より順調です」
前畑利恵は答える。
徳田幕府が三百年ぶりに復活してから幕藩体制も復活したが武家制度は無い。
徳田は征夷大将軍として幕府を牽引している。大統領として国民生活に貢献した。
徳田は織畑首相にも、天変地異の状況を確認した。
「田沼博士の話では、あまり猶予がないそうです」
「人的被害を最小限にする方法は移住しかありません」
『移住には、どのくらいかかるのかなぁ・・・』
「最低でも三カ月ないと」
『全然時間ないじゃない・・・・・・』
大統領は織畑に漏らした。
「それが限界ですが・・・・・・」
「首都機能のメインはここ学園都市にほぼ移転完了しています」
『万が一の場合は・・・・・・』
『静女に相談して【転移魔法】を聞いてみるしかないわ』
「それは、伝家の宝刀になりそうですね・・・・・・」
インターネットニューススピードがライブ配信で、徳田康代大統領を特集していた。
ドロンが上空から広大な【神聖学園都市】の全貌を写し出している。
新しい政府の専用滑走路と田園風景が見えて来た。
学園の校舎と大型ショッピングセンターなどが見えている。
「新政府は、箱物行政を削減と聞いていますが」
「そのためか、大統領官邸らしき建物の建設が見当たりません・・・・・・」
ネットニュースのアナウンサーが伝えた。
「広大な神聖女学園グループの校舎、隣接施設」
「そして田園と滑走路が何本か見えています」
「神聖女学園は中等部、高等部、大学があって」
「能力者を一貫して育成していると聞いています」
「陰陽師の子孫の安甲晴美(あきのはるみ)はーー」
「神聖女学園の教師をしながら、神聖神社の神主さんをしているそうです」
「徳田大統領、前畑副大統領、織畑首相たちはーー」
「神聖女学園の生徒会に在籍しているそうですね」
アナウンサーが伝えると大統領が答えた。
『何処にいるかではなく、何をするかなので場所は関係ありませんわ』
『この地球の神々の意思を尊重して【幸せ政策】を実現したいと思います・・・・・・』
「大統領、ありがとうございました。中継は、以上で終了します」
康代が神々とコンタクトが出来ることを知るのは限られた者だけだった。
新政府のメイン機能は田園の地下に新しく設置されていたが非公開だった。
地下要塞は織畑首相と前畑副大統領の提案だった。
織畑は地下に最小限のステルス司令部を提案した。前畑は自給自足システムの促進を提案した。
徳田は鎖国に伴い、外交の入り口を閉鎖し外国基地を撤去し幕府の国防軍が駐留した。
前畑の口癖は国家の実質的な経費を算出して本当に必要な経費の算出だった。
そのためのデノミ政策と通貨と税金ゼロ政策だった。前畑は徹底的に余剰部分を切り捨てると言うチート級の政策だった。
前畑は徳田に言った。
「もしも、税収がゼロだったら」
「実質いくら必要と思いますか」
「今までの政府は、老若男女の国民からカネを巻き上げた結果」
「神の怒りを受けて地上世界から消されました」
『そうね、前畑さんの仰る通りですわ』
『アトランティスのような天罰ね』
『国家がカネ儲けするような搾取は腐敗の肥やしになります』
「国家を腐敗させ人間を変貌させる原因はーー」
「不安、憎悪、妬みなどの負のエネルギーも」
織畑も加わった。
「原因を徹底的に削除して可視化するには、シンプルにしましょう」
「偽善者は複雑を装い弱者を食い物にしますからね」
前畑利家の生まれ変わりは天才的な頭脳で皇国再生に貢献した。
『会議に箱物は必要ありません・・・・・・』
『ネットのホログラムディスプレイがあれば十分』
『しかし、産みの苦しみは避けられないわね』
徳田は珍しくため息。
天女の天宮静女が、傍らで頷いていた。
「まだまだ、性根の腐った者もいるでござる」
「当分は気を付けるが良いでござる」
その時、神使の黒猫のセリエが小さな姿で生徒会室に現れた。
「困ったら我に相談ニャ!」
「我は、最強だにゃ」
黒猫は話して消えて光になった。
神使セリエは敵にしたら最悪だけど、味方にしたら史上最強だった。
徳田康代、織畑信美、前畑利恵、天宮静女
そして、地球の神【アセリア】の神使[セリエ]を味方に皇国再生は始動したばかりだった。
徳田大統領は整備を加えて【無償提供の国民住宅】増設プランを思案している。
『無償しかない』
『国だから出来ること・・・・・・』
大江戸平野も梅雨の季節となった。移動設備の充実している学園都市では問題ない。
徳田幕府は【ノーマネーノータックス政策】をも推進していたが課題は山積している。
部分的には実現の目処が出来ていた。
全国の公立私立の学校は統合され無償化になった。
『これでいい』
『これからだ』
神聖女学園は、元々無償化だったことに加えて新政府の中心になったため除外された。
康代は、隣室の青色のソファに腰掛けた。すぐに窓側に移動して大統領コメントを考える。
真っ赤な夕焼けが、防弾窓ガラスに反射していた。
康代は、自問自答しながら自身の心とロールプレイをしていた。
『国家とは、国民に与える側でなくちゃいけない』
『国家が国民から搾取するのはおかしい』
『国家の利益を国民が受ける』
『親が子を育てるのと同じ』
『間違った考え方は国家の方向性を失います』
『国家の義務は、国民を幸せにすることです。違いますか』
手短な内容を徳田康代大統領は音声にしてみた。
康代は学園都市の再構築を含め、未来の青写真をまとめて地下都市を考えた。
永畑町の大陥没を考えれば、地下が絶対安全と言うことは考えにくい。
しかし狭い皇国の東都の中で、核シェルターをも考えれば、地下は捨て難く康代の心を揺さぶる。
学園内にある一部の田園は、自給自足として機能して生徒たちの食事に役立っている。
電力は宇宙発電所の安定供給で既に実現している。
ある物とない物をパズルゲームをするように康代は頭の中で整理した。
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