【九】戦国チート絵巻 なかった歴史
天女の静女と康代は、同じ寝室を共有していた。
今夜は、静女から真実の歴史の一部が康代に知らされる。
「
「信長殿は、光秀に殺害されていないでござるよー」
「真犯人は歴史に隠蔽されたでござるよー」
「あれは今でいう内部告発でござる」
『では、本能寺はどうなったのですか』
「本能寺には密通者が潜入していたのでござる」
「信長殿は、密通者によって消されたのでござる」
『本能寺の変は、無かったのですね』
「そうじゃ、光秀もその者たちによって消されたのでござる」
『それじゃ、光秀殿は敵では無かったのですね』
「今で言う冤罪でござるよー」
『大昔から陰謀は歴史まで塗り替えていたのですね』
「そうじゃ、起きていないことを起きたようにしていたのでござる」
『じゃあ、歴史の教科書はどうなるの』
「あれは、作家の創作と変わらないのでござる」
『小説皇国ものがたりですね』
「左様でござる」
珍しく静女と康代の歴史談義は盛り上がっていた。
『明里光秀の生まれ変わりを生徒会に参加させてと、
ーー安甲先生からお願いされていて・・・・・・』
「歴史の改竄故にその方は問題無いでござるよー」
『そうね、それで安心!でも、濡れ衣は許せないわ」
「大丈夫、その時は、天女である拙者が人肌脱ぐから安心でござるよ」
「信長の家臣が神聖女学園の生徒会で揃うのも不思議な
『ある意味、今世紀最強の布陣ですわ』
「名前は何でござる」
「確か、明里光夏(あかりみか)と聞いています」
康代は自分を含めて戦国時代の仲間を思い浮かべていた。
前世を見ると戦国チート絵巻だ。
徳田康代 家康
織畑信美 信長
前畑利恵 利家
豊下秀美 秀吉
明里光夏 光秀
天女まで加わる皇国最強のキャビネットの完成になる。
織畑信美と前畑利恵が学園寮の康代の部屋を訪ねた。
「康代、突然、悪いわね」
二人は、慣れている部屋の中を移動して康代と静女の前の青色のソファに腰掛けた。
『いやいや、悪いどころか歓迎よ』
「気持ち悪いよ」
『実は、今、静女と歴史の改竄の真実を話し合っていたのよ』
「そうね、私たち戦国時代からの
『信美、そうなのよ』
『それでね、そんなこんなを考えていたら信美たちが来たわけなのよ』
「じゃあ、私たち、康代のテレパシーで呼ばれたのかしらね」
利恵が笑いながら話した。
『本能寺の変の真実を静女から聞いて驚いたのよ』
「康代に真実を伝えたのでござる」
「そうよね、あれ、ちょっと変と前から思っていたのよ」
信美は答えながら考え込むと
「何と言うか、私の前世の無意識が違うというのよ夢の中で」
『つまり、本能寺の変と別の事件がすり替えられたのでしょう』
「そうなの、何というか、別の何者かに襲撃されたと言うか」
『静女が言う通り、光秀犯人説は無かったと言う訳ね』
「左様でござる」
金曜日の放課後、生徒会室の執務室には、
ーー徳田康代、織畑信美、前畑利恵、豊下秀美と天女の天宮静女が、
ーー光秀の生まれ変わりとの顔合わせで集まっていた。
滅多に生徒会室に現れない
『安甲先生、本日はよろしくお願いします』
「そうね、光秀の生まれ変わりの明里光夏(あかりみか)と面識があるのは、私だけですから」
「秀美、ちょっと外を見ててくれないか」
信美が秀美に言う。
「お顔知らないのよね、秀美さん」
安甲先生から言われた秀美は照れ笑いで答えた。
しばらくして、生徒会室がノックされ、生徒会メンバーが明里光夏を案内してきた。
「明里さん、こっちよ、悪いわね、急なお願いで」
「安甲先生、私こそ、呼んで頂き、ありがとうございます」
「明里さんを紹介するわね」
「みなさんとは初対面ですが、今日から生徒会に参加することになった明里光夏さんです」
黒茶色の長い髪はポニーテールでまとめられていた。
背丈は一六八センチくらいのやや冷たい印象が漂う美人だった。
「先生から紹介された、明里光夏です。よろしくお願いします」
「左から順に紹介するわね。徳田康代さん、天宮静女さん、織畑信美さん、前畑利恵さん、豊下秀美さん」
「じゃ、私は仕事に戻るから、徳田さん、あとはよろしくね」
安甲先生は康代に丸投げして生徒会室を出て行った。
「こんなに、広い部屋とは知りませんでした」
明里は驚いて声にした。
『明里さん、みなさんそういうのよ』
『ところで、明里さん、最初に話すことがあるのよ』
「何でしょうか」
『天女の天宮静女さんからがいいかな』
康代が指名した。
「天宮でござる」
「私は本能寺の歴史を知る者でござるから明里光秀の濡れ衣を知ってござる」
「明里光秀さんの嘘の歴史の汚名の真実は、ここにおる者の全員が知ってござる」
『だから、明里さんは何も心配しないで戦国の生まれ変わりの私たちと前世の時のようにしましょう』
明里光夏は涙を溜めながら
「みなさん、ありがとうございます」
と言って、ハンカチで目頭を押さえた。
神使の黒猫のセリエが現れた。
「いよいよ戦国転生女子高生が揃ったようじゃにゃ」
『セリエ様、こんにちは』
康代が答える。
「康代よ、我の紹介を頼むにゃ」
『こちらは、神使のセリエ様です』
セリエと初対面の秀美や光夏はポカンとしている。
無理もない、猫が人間言葉を話すのだから。
「我は、滅多に其方たちの前には現れにゃいが今日は嬉しくて出てしまったにゃあ」
「其方達にスキルを与えたにゃあ、我を見て我の言葉が分かるスキルだにゃあ」
「皇国を良き国にするにゃあ其方達の力が必要にゃあ分かるにゃあ」
「それは良くしたいと願う愛の力にゃあ」
「其方たちのお陰で皇国の歴史が動き出そうとしているにゃ」
「困ったら、心の中で神使のセリエを呼ぶが良いにゃ」
「千人力だから安心してにゃあ」
神使セリエは消えて光になった。
セリエが消えたあと、前畑利恵の提案でお茶会が決まった。
「光夏さん歓迎のお茶会、紅茶でよろしいかしら」
一同は生徒会の会議テーブルに移動して、他のメンバーと一緒に団欒のひと時を過ごした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます