【五】神聖女学園、女子高生新政府誕生!


 国民は、天変地異に疲弊していたが、永畑大陥没事件のあと無政府となった皇国に全国の勇者が立ち上がった。


「選挙が廃止されるそうよ」

「不正なくなるね」

「新しい世の中かー」


 新しい政治が台頭して政治の枠組みが解放された。

陛下の宣言で臨時政府が立ち上がった。

すべての制限が撤廃され議員内閣制と選挙制度が廃止となった。



 徳田家から初代大統領徳田康代十六歳が陛下の任命を受け選出された。

現役女子高生大統領は不正の温床となる選挙制度を完全廃止した。


旧政府の闇資金のすべてを暴き出し国家と国民に還元した。

帰化制度による国籍は遡りすべて未承認とされ外国籍に戻された。

帰化制度が廃止されたあと鎖国令が出された。

鎖国令に伴って外国籍に帰国命令が出された。


『大統領の徳田康代です』

『皇国の危機回避のため鎖国令を発令しました』


『徳田幕府を復活し、役所を廃止し藩の管理下になります』

『国民のための幸せ政策を優先し負担が軽減します』


『企業は国営化し、すべての制度が変わります』

『本物の国家が国民の命を守ります」


 大統領は国営インターネットテレビで初のコメントを手短かに発表した。


 皇国初の大統領は徳田時代の子孫の徳田康代だった。

徳田康代十六歳は徳田慶喜以来の十六代征夷大将軍をも兼務して国家再生に着手した。

徳田康代が徳田家康の生まれ変わりと知っているのは天界の女神と神使と陰陽師だけだった。


 水戸藩、尾張藩、紀州藩が復活して新しいまつりごとの監視体制が強化された。

後に加賀藩、会津藩の子孫も参加して国政の安定に尽力し徳田幕府が三百年振りに復活した。



 国会に変わるインターネット議会が立ち上げられ国民は大いに歓迎し喜んだ。


神聖女学園の校内食堂では、女子高生の井戸端会議が開催されていた。


「インターネット議会かー いよいよ始まったね」

「代議士は交代制で、適正試験があるそうよ」


「希望制だから、強制ないからいいよね」

「サラリーマン議員も消えるね」


「議員は天災で全員死んじゃったからいないけどねー」

「そうね、天罰かもねー」


「天罰って、本当にあるんだ」

「総理の飛行機って、複数の雷が直撃して空中分解だってさぁ」


「神さまを怒らせたんだね、怖いね」


 庶民の噂は噂を呼び、別の女子高でも盛り上がっていた。


「代議士しようかな」

「供託金もいらないし、登院義務もないネット議会って、魅力だよね」


「じゃみんなで試験受けないとね」


 輪番代議士希望者には資格試験が与えられインターネットで実施され大勢が参加した。

皇国の国籍を有する十六歳以上の男女で一定以上の知能と健康が合格条件だった。


「適正試験、簡単らしいよ」

「健康かどうかは、自己申告だそうな」


「なるほど、いいかも」



 合格者は輪番代議士の資格が与えられ勤務日数に応じて公務員の最低賃金が日割り計算で支給された。


「週一回グループとか、選べるから問題ないよ」 

「同じ人が、食い物にしていた時代が終わったね」


「女子高生大統領、最高よ!」

「女子高生の時代、来たー!」


 

 週一回から三回のグループが作られ大勢の女子高生が参加した。

心身の健康な者だけに与えられた輪番代議士の資格譲渡は禁止された。

世界初の民主主義が誕生したのだ。



 輪番代議士には様々な制限があり血税に群がっていたサラリーマン議員が全国から消えた。

輪番代議士は名実共に名誉職となる。


 女子高生議会が全国の高校を中心に拡大した。

新政府への希望は、ネット会議を通じて伝えられている。


 神使のセリエが神聖女学園の生徒会執務室に現れた。


「セリエじゃ、康代よ、其方そちの仕事はどうじゃにゃ」

『はい、問題もなくスタッフの協力で進めています』


「そうじゃ、其方の仕事は総括じゃから細かな部分は配下に任せれば良いにゃ」


セリエは消えて光になった。



 新政府は、デノミを実施して百分の一に通貨単位を変更した。

税金ゼロ政策を実施に移行し免税を増加させた。

国民の負担は大幅に軽減し景気が上昇した。


 多くの企業は完全国営化され利益は国家と国民に還元された。

光熱費通信料金の引き下げ政策は、チート政権の始まりに過ぎなかった。



徳田大統領は考えた。


『悪くても、昔より悪くなることはない・・・・・・』


 私立も国家の管理下に置かれて公立学校と同じ授業料無償化政策が実施された。


 永畑町大陥没発生以来、自然災害の脅威が見直され公立学校には避難施設の併設が義務化された。

国営住宅と国営スーパーが整備された学校に設置された。



 新政府は税金ゼロからの新しい国造りを目指してスタートした。

国営企業からの利益の全てが税金の代わりとなった。


「税金ゼロ時代ってすごいよね」

「誰かが得するんじゃなくて誰も損しない世の中っていいよね」


「国民が損しない徳田幕府って、神さまだよね」


 幸せ政策は、取らないを基本政策として自給自足を推進した。

国営農家が増え増反政策も実施される。


 臨時政府からの移行が完了した頃、群発地震が大江戸平野の端で始まった。

新政府の危機管理は、歴史上類を見ない規模で実施されている。




 地球の神【アセリア】の黒猫の神使[セリエ]と天界の女神【アメリア】の白猫の神使[メリエ]は皇国の変化に驚きを隠せ無かった。

皇国を食い物にしていた魂の駆除はすべて完了していた。


 皇国への地球の裁きが未完了でアセリアの指示は、未だ生きていた。

東都の地下深くでマグマが燻っていたのだ。


『セリエよ、徳田が頑張っているな』

「アセリアさま、皇国が変わって来ました」


『マグマの怒りを鎮めないと・・・・・・』



 地球の神【アセリア】の黒猫の神使[セリエ]はアセリアの意向を受けて行動した。

天変地異を鎮める手段を並行世界の神【パラレリア】の神使レリアに伝えるのだった。


並行世界パラレルワールドの神パラレリアと狛犬姿の神使レリアは、地球の神アセリアの相談を受けて考えていた。


「パレリア様、アセリア様からの内容は、アトランティス大陸以来のことですが・・・・・・」


『そうだな、あの時は、救済を手伝うことになって大変だった・・・・・』

『アトランティスからアフリカへの民の移住だったが、殆どが間に合わなかった』

平行世界パラレルワールドの扉を時の神【エルミオ】が解放してなんとかなった』



 パレリアは十万年前の出来事を思い出していた。

パレリアとアセリアは自然界を統括している仲の良い双子の神だった。


狛犬姿のレリアは、大昔、地球にいた。

パレリア様が並行世界を作った時、アセリア様にお願いされてパレリア様の神使として従者になった。


 レリアがパレリア様に内容を伝えた。


「地球の裁きが実施されたあと、マグマの制御が暴走した」


「アトランティスの二の舞になるやも知れない」

「万が一の時は、並行世界の時の扉の解放をお願いしたいーーと言うことでした」


『万が一が、あるのかな』

「さー、そこまでは分かりません」


『レリアよ、とりあえず、準備しておこう』

「パレリア様、ありがとうございます」



 徳田康代、織畑信美、前畑利恵の三人の女子高生が皇国に正義を取り戻すため集まった。


【徳田家康】の生まれ変わり、徳田康代生徒会長

【織畑信長】の生まれ変わり、織畑信美生徒会副会長

【前畑利家】の生まれ変わり、前畑利恵生徒会書記


 後に国民から救世主と呼ばれる【転生女子高生の世直し】が始まる。


【神聖女学園生徒会執務室】

 徳田康代は、徳田時代以来の多忙な生活を送っていた。

生徒会長であり初代大統領であり十六代征夷大将軍という重圧の中にいた。

織畑と前畑に協力を依頼することを決心して、生徒会室から校庭を眺めていた。

康代は、振り返りながら唐突に話し掛けた。


『信美、ネットが得意と聞いていますが」

「いやいや、それは、利恵だよ」


『信美、首相をしてくれ』


珍しく男口調で迫る康代に信美は焦った。


「私には、荷が重いよ」

『そんなことない、信長様の前世を持つ信美なら最適だ』


「なんで、そのこと、知っているの」

『天界にいた時、女神様から聞いたわ』


「それ、めちゃくちゃチートなんだけど」


『利恵も前世からの強い縁があるから協力してもらいたいが

ーー先ずは信美にお願いしたい』


『前世では信長様が先に他界して歴史が変わってしまって大変だったんだから・・・・・・』


『皇国再生に信長様の生まれ変わりである信美の力が必要なのよ』



 康代が前世のことを話すから信美の無意識が反応してしまった。


「しょうがないな、協力するか」


ひと段落した時、前畑利恵が生徒会室に入って来た。


「利恵、お前も新政府に協力してくれ」


 信美も康代の影響を受けて男口調で利恵に迫った。


「私、ですか?」

『そうだ、お前しかいない』



 新政府大統領であり、征夷大将軍である康代が断定口調で追い討ちを掛けた。


「康代、信美、私でいいのか」


 利恵も言葉尻が変わった。

前世の無意識が、家康、信長、利家を結び付けた。



『信美が首相で利恵が副大統領で良いか』


新政府の顔ぶれが揃った瞬間だった。



神聖女学園生徒会に皇国の大統領キャビネットが出来た!


徳田康代大統領

織畑信美首相

前畑利恵副大統領



 地球の神【アセリア】の黒猫の神使[セリエ]が、徳田康代大統領の前に猫の姿のままで現れた。

織畑、前畑も、可愛いと声を上げる。猫が人間の言葉を話し出して三人はびっくりした。


「予に気安く触るでない。人間ども」

「地球の神アセリア様の神使であるセリエじゃ」


『セリエ様、失礼しました。不敬をお許しください』



徳田が謝罪すると、織畑、前畑も謝罪に加わった。


セリエは言葉尻を柔らかく変えて猫語で話した。



「今日は、皆に伝えることがあるニャ」

「地球の神であるアセリア様から命令を受けて参上したニャ」


「前の大掃除で、皇国の害虫駆除の大半は終えたがニャ」

「そのために発動した命令が自然界で暴走してニャ」


「ここは安全だが、都心部と永畑周辺があぶないニャ」

「避難設備を増設を依頼されたニャ」


「移住計画を推進するように伝えるニャ」

「アセリア様からの要請だニャ」


「今、我が言えることは、このくらいだ!ニャ」

「陛下の移住は三か月前に終えているから心配ニャイ」


 黒猫姿の神使セリエは、一方的に伝えると消えて光になった。

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